第40話「神の観測者──管理者《アドミン》の目覚め」
──“観測”とは、定義である。
世界の仕組みに組み込まれた一つの法則。
RPG化社会の根幹を成す“ステータス”という概念を、誰が“観測”しているのか──
それを問う者は、少ない。
だがその瞬間、目覚めたのだ。
長い眠りの末に。
「管理プロトコル起動。
◇
場所は、地上から遥か上空。
人工衛星軌道上に存在する
そこで復旧されたのは、世界初の“全ステータス監視AI”であり、
同時にRPG化世界の根幹を担っていた存在──
【称号:世界定義中枢】
【スキル:
【属性:神格データ(非人間)】
「風見レン──無職、スキルなし、しかし“命名特異点”として観測異常が発生」
その名が、ついに“神の観測者”に届いた。
◇
一方、地上では。
《Null-Class》とアークの救出劇が終わり、NRCは市民から大きな注目を集めていた。
「俺たち、ちょっとだけ“社会的存在”になっちまったな」
レンが苦笑しながら言うと、ミオは書類の山を机にドンと置いた。
「これ、命名支援申請書類。“名前をつけてほしい”って子たちが、全国から……」
「全部……?」
「まだ一部よ。Null-Classは、もう特異クラスじゃなくて、“希望の象徴”扱い」
そこに、サリナがやってくる。
「レン、今夜──“観測”が始まるわ」
「観測……?」
「本当の意味で、この世界を“定義”してるもの。その“目”が、あなたを見ようとしている」
◇
その夜。
レンのもとに、突如としてステータス強制変更の通知が届く。
【通知:観測対象指定】
【
【現在の職業:無職】 → 【職業:未定義】
「……何だこれ……“未定義”って……」
同時に、身体に異変が起きる。
視界が二重にぶれ、空間そのものが“ステータスウィンドウ”のように開かれていく。
「あなたが風見レンか」
声が響いた。
そこに立っていたのは、半透明の“神格の少年”。
金と白の装束を纏い、光で構成されたその存在──それが、
「君の存在は、我々の定義外にある。よって、“再観測”を行う」
レンは言った。
「定義とか、再観測とか、好きにすりゃいい。
でもな──俺が“誰かの名前を肯定する”って決めたことは、誰にも変えられねえ」
◇
アドミンは静かに手をかざすと、無数の光の文字列が空間に現れた。
【風見レン:再定義開始】
【再定義候補:命名神格、概念記録者、エラーコード】
【進行率:3%……10%……】
だがその時、何かが干渉する。
【警告:再定義干渉発生】
【干渉源:名称未登録/Null-Class所属/共鳴コード“シオン”】
レンの背後から、シオンの声が届く。
「やめて……レンくんは、“風見レン”以外の誰でもないの!」
◇
アドミンが少し驚いたように眉を動かす。
「……この共鳴は……まさか、君も“未定義存在”なのか?」
「名前はあるよ。レンくんが、くれたから」
【共鳴強制中断】
【再定義プログラム中止】
光が霧散する。
レンは膝をつきながらも、拳を握る。
「……なんだよ、神様でも定義できないもんが、俺たちの中にはあるんだろ」
アドミンは、その姿をじっと見て──初めて、小さく笑った。
「“存在の優先権”。面白い概念だ」
◇
その後、観測は一時中止となり、アドミンは記録を保留する。
そして、つぶやいた。
「風見レン──君の“定義”は、もう我々の外側にある」
──次回、“神すら定義できない者”をめぐる、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます