林檎で酔ったの。そういうこと。
@honeboneshi
林檎で酔った
お酒飲んでないよ。
林檎で酔ったの。そういうこと。
雨音に彼女がにじんで、艶やか。
ベッドが椅子になる。
さっきからずっと、君の笑い声が甘くって、
ぐるぐる回って、くらくら。
そろそろ0時。
とっくに薄暗い。
華奢な体重が乗って、それから手を繋いで。
舌がとろとろ溶ける。
まつげがくすぐったい。
笑っちゃって、
雰囲気が台無しになったりならなかったり。
チョコレートみたいな首輪が、
ついている気がする。
今更、なんだかおかしい。
僕は絞首台にキスしている。
近すぎて表情がわからないけど
顔色を伺う段階ではないことはわかる。
あんなに憧れて見惚れていたものが
哀れな姿で僕に支配されている。
毒々しい気持ちよさが脳をねじってくる。
硝子細工が粉々に割れて、喘いで、
粘土の塊みたいになってどんどん品を失う。
吐き気が喉元でよじれて頭に絡まって
汚い発想になる。
女の髪を掴んでベッドに押し付ける。
風情とか雰囲気とか、なんて馬鹿らしい。
もはや崇拝の域だった僕の神を
ゴミのように扱って、価値観が蒸発した。
喪失感だけが残った。
なにもわからない。
林檎で酔ったの。そういうこと。 @honeboneshi
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