こんなロクでもない転生者が、モブとして異世界で生き残るには
ちゃんユウ
第1章 灰かぶりの少女に枯れ散る彼岸花を
第1話 異世界で生き残るには
『 グリモワール
の聖剣伝説
Grimoire of the Holy Sword Legend 』
世界一の魔法学園として有名なグリモワールアカデミーで、主人公レンヤが落ちこぼれとして物語が開始する。そんな落ちこぼれだった彼が学園に迫る数々の厄災を乗り越え成長し、そして覚醒して英雄となり世界を救う学園ファンタジーのゲーム。
ストーリーはありきたりなモノでゲーム性はよくある自動戦闘システム。世界で人気なゲームではなく良くも悪くもなく量産型なモバイルゲーム。だがキャラデザは好みであった。だが課金する程でもやり込んだ訳でもないのにも関わらず...
俺はそのゲームの世界に入り込んでしまった。
「...夢なら早く覚めてくれ。ひでぇ、冗談だ」
目の前の鏡に映るベッドの上に座り込む自分の姿を見て、頭を抱えるのであった。
「あれだろ?今流行りのゲームに転生したって奴だろ?...なら、主人公やその取り巻きとかまでは言わないが、せめて悪役貴族とか名前のあるキャラにしてくれよ。アリス=ウィンチェスターなんて聞いたこともねぇ...」
プレイアブキャラとしてじゃなく、脇役キャラに転生してしまったようだ。ことの始まりは、森の中で目を覚ましたことだ。何故かこいつはボロボの状態で倒れていた。周りを見渡すと近くには横に倒れている馬車があった。コイツの記憶を辿ると盗賊に襲われて、従者と逃げコイツは逃げ遅れて殺されたらしい、実に運の悪い奴だった。それから待つと従者が中世ヨーロッパみたいな鎧を纏った奴らを連れて戻ってきた。
それで色々あったが、コイツはある学園に入学する為に学園都市と呼ばれている場所に向かっていたらしい。俺はその学園を見て初めてここがグリモワールの聖剣伝説の世界だと気付いたのだ。
訳の分からんまま、訳の分からん奴の体に憑依されている事に未だ頭が混乱しているのに、ここがゲームの世界だと気づいた時は頭が痛くなったもんだ。
何より最悪なのが、このゲームは鬼畜ゲーと有名な所だ。ちゃんと相性やらレベリングやらしないとすぐにゲームオーバーしてしまうほど難易度が高い。そんな中俺は脇役に転生したのに、こいつの能力があまりにも酷すぎる。
ーーーーーー
アリス=ウィンチェスター
体力:E(SSS) 魔力:SS( )
筋力:E(SSS) 魔法:E( )
脚力:C(SSS) 知力:E(B)
幸運:E(B) 才能:普通
加護:生命の加護
ーーーーー
このアルファベットはコイツの潜在能力を表している。
ゲームの時のステータスと比べれば色々と省かれているが、魔法が当たり前の世界で、魔法の潜在数値がEは最悪だ。それはもう魔法が使えないと同じだ。そんな奴がよくこんな学園に入れたのかが謎だ。それにもう一つ気になるのが、()の中の潜在数値だ。まるで2人分のステータスがあるみたいだが、ゲームにはこんなシステムはなかった。
ちなみに主人公レンヤは覚醒前なら魔力と魔法がSSSで幸運がAでそれ以外がSSだったような。
それにこの生命の加護の能力って確か、回復能力が上がり、身体能力が上昇する奴だったよな?
「はぁー、せめて魔法使いたかったな...」
魔力の潜在値がSSとは言え、魔法の潜在値がEならまともに魔法なんて発動しない。蓄えられる量はあるのに、それを排出するモノが小さければ意味がない。
「...それにしても、こいつ顔は良いな」
刈り上げられ汚れ一つのない真っ白な髪に、右耳に二つの金色のフープピアス、そして鋭い目つきには血黒く染められている渦の様な同心円系の様な模様の瞳。少し不満があるとしたら目つきが悪い。
「でもヒョロいな」
いや、一般的に見れば少し腹が出ている普通の体型だが。身長の高さと比べればヒョロヒョロ見えてしまうだろう。
「新学期まで2週間もある、せめて人前に出せるぐらい筋肉をつけたいな。どうせ俺は魔法がまともに使えないんだ、なら人より筋肉をつけないとな」
そんな事より今の状況を整理しないとな。
まずなんで俺はこのゲームの世界に入り込んだ?いや、ここはゲームの世界と言って良いのか、この世界に転生してから半月は経ったが、あまりにも現実味がありすぎる。
そして目的はなんなんだ?一体誰が?いや、そんな事は考えてもどうせ答えが出ないか。ならまずはどうするかだ。ここは学園だが、決して死なないって訳じゃない。このステータスなら、間違いなくアリスは...
いや、俺は死ぬな。
話を盛り上げるには、学園に数々の危機が降りかかる。そしてそれを主人公が解決する。だが決して死人が出ないって訳じゃない。大抵メインキャラが死ぬ事はないが、脇役キャラは死にやすい。第1章のエピソード5、つまり第1章の最終話の事件ではまともに魔法が使えない俺が生き残れる自信がない。
「はぁ、どうせこんな事になるなら最後までやってれば良かった」
例えゲーム知識で死亡を回避しても、俺はこのゲームを最後までやっていない。第4章のエピソード5であるキャラが4章のラスボスによって死亡してしまい、俺は萎えて辞めてしまったのだ。完結したとは聞いたが、俺は第5章からの話は知らないし、何章まであるのかも分からない。
「今から逃げるのもいい」
この学園に危機が迫るなら、この学園を去れば良いじゃんかと考えてみたが、このゲームはこの学園以外の情報はあまり語られていない。そんな知らない世界で1人で飛び込むのも危険だ。なら、少しずつ外の世界を調べてこの学園に留まる方が安全かもしれない。
色々と起きるがどうせ主人公がなんとかしてくれるだろう。てか主人公じゃないと倒せない敵もいるから、ボスの事は考えなくとも良い。
もし、主人公が死んでしまったら
その言葉が脳に浮かぶ。もう一度言うがこのゲームは鬼畜ゲーだ、少しのミスでゲームオーバーになってしまう。なら主人公が死んだ後の世界はどうなる?世界滅亡の恐れがある。
やはり裏で少し手助けをする必要があるんじゃないか?でも下手な事をしてストーリー展開を壊してしまったらどうなる?
「まぁ、いっか。どうせ、どうにかなるだろう」
色々と考えたが、ここで結論は出ないとアリスはベッドに倒れ込むようにリラックスをする。流石名門学園と言えるのがベッドがふわふわだ。
「...」
急に眠気が襲い、気付いたら眠ってしまった。目を覚ますと外は夕焼けが空を赤く染めていた。この学園に来たのは昼前だ、随分と眠ってしまったようだ。アリスはベランダに出て夕陽を眺める事にした。
「綺麗だな...タバコがあれば最高なんだけどな」
今は学生の身、タバコなんて持ってるいわけがない。てか、この世界にタバコなんて存在するのか?
「よし!」
アリスは夕陽を見て、決断をするのだった。
「絶対死んでたまるか。俺はこの世界で生き残ってやる」
夕陽に向かって強く握った拳を向けて誓うのだった。
その誓いが、アリスとしての人生の本当の始まりであった。世界の結末なんて知らない、もしかしたら世界滅亡と言うバッドエンドかもしれない、それでもアリス生き残ると誓った。
「さてと、まずは力を付けないとな」
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