知ることから始めよう
斗花
第1話
ある日、怪我をして保健室に行った時のことだった。
「失礼します……」
入学して初めて入る保健室に何となく緊張していた。
「はい、こんにちはー」
明るくて綺麗な保健の先生は私の指を見るとスグにばんそうこうを用意してくれて。
「ありがとうございました」
頭を下げて保健室を出ようとした時。
「ちーっす、桃子ちゃーん。おはよーっす」
そう言いながら保健室に入ってきて、私とぶつかった男子。
ビックリして見上げると、そちらもビックリして私のことを見下ろす。
その男子は隣の隣のクラスの
「あ、あの……ごめんなさ、」
噂によると彼は毎晩の様にクラブに通い、友達はみんな不良でタバコ吸ってて、暴走族のアタマ(?)を張っているとか、何とか……。
そんな噂が頭を巡りカミカミになってしまった。
すごい睨まれてしまい怖くなって自然と後ろに下がった。
「菅野くん、あんまり見ないの。
尾木さん怖がってるでしょ」
しかし菅野くんは全く私から目を離さない。……ヤバい、殺される。
半殺しだ……!
しばらくして私を見たまま静かに聞いてきた。
「あんた、名前は?」
低くて少し掠れてて、怖い声で聞かれてしまう。
「お、おぎ……、しいか、です……」
下を見たまま答えると、ふーんと鼻を鳴らす。
「クラスは?」
「し、しーぐみ……」
すると菅野くんは独り言みたく「C組ねぇ……」としみじみと呟く。
「部活は?」
「きゅ、弓道部……」
泣きそうになってしまい、すると菅野くんはやっと私の前からどいてくれた。息をついて保健室を出ようとすると。
「待てよ」
背中に呼び掛けられてビクッと振り返った。
「は、はい……」
しかしその表情は楽しそうに笑っていて。
「授業、遅れないよーにね」
妙に色っぽい感じの声で、突然そんなこと言われて拍子抜けしてしまった。
「あなたこそ授業出なさい」
「次の美術はちゃんと出る」
保健の富士峰先生とも普通に会話していて。
怖さと安心が混じったまま教室に一人、戻った。
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