『片恋五年、殺意。』

猫墨海月

『片恋五年、殺害。』

私は泣いた。

貴方に投げつけられた言葉で。

私は泣いた。

貴方に持たされた期待で。

確かな期待を持たせた貴方はのうのうと生きている。

全て、忘れて。

ねえ私は、

そんなに脆弱な女に見えたかしら。

貴方を永久に愛すような、女に。


嫌いだ。

脳髄の深部が、お前を殺す為喚き散らす。

憎い。

目の細まる時をぶち壊してしまいたい。

手を伸ばした化物はお前だろう。

救う気も、救う気力も、救う言葉も、救う笑顔も、救う頭も、救うつもりもないのなら、

近づいたお前の責任だ。

人殺しを好むお前には地獄がお似合いだ。


去ね。世界に殺されてしまえ。

私を騙した罰を受けろ。

酷すぎる嘘に騙された子の数を数えていろ。

どうせ誰一人悪意など無かったと、

莫迦みたいな言訳で逃亡するんだろ。


煩わしい時間の速さ、自分の記憶、貴方の存在。

待つばかりで私一人救おうとしない他人に吐いた毒。

その毒すら見知らぬものにするお前を、私は許しはしない。

私は自由になりたい。

だけど、お前を殺す最期の人になりたい。

そしてお前は、抉られ殴られ潰され壊され裂かれ殺され殺して亡くなってくれ。

期待した末の敗北とか、後味が悪いから。


「煩い」「死んで」「消えろ」「知らない」「もう」

「嫌いだ、お前なんて」

武器となった言葉で目覚める深夜。

楽しかった生きがいが、苦しめるための死にがいになっている。

それでも好きだと言えたなら、振り向いてもらえたのだろうか。

そう思えることもなく、私は私の中では殺害衝動を抑え込んでいる。

お前は逃げられないんだって早く理解しなよ。


人間は塵だ。

好きな人でも貶せるんだ。陥れられるんだ。

でもお前は私より最低だ。

「振ってよ」

その言葉に返す言葉を、他人のせいにしたかったんだろ。

何度も泣かせた私を泣かせるつもりで、言ったんだろ。

分かってたら私は想わなかったよ。

悲しくなんてない。

苦しくなんてない。

ただ、悔しさだけが込み上げていた。

あんたに振られたところで悲しくない。

私が望んだことだ。

でも、それでも流れた涙に。

酷く腹が立ったのだけは、忘れないのだろう。


繋ぎ止められていたのは、知っていた。

返答を望めないのも、知っていた。

ただ、それでも良かった。

少しだけでも慈悲をくれたなら、良かったのに。

あなたはくれなかった。だから。


だから全部奪ってやったんだ!


命乞いなんてしてみなさい。

今度こそあなたの息の音は絶える。

ねぇ、私って最低?

答えは否。

再愛だった、最低最悪のあなたは死んだから。

あなたは要らない。

私の要らないあなたなんて要らない。

あなたが要らない。

私が要らないあなたなんて要らない。

あなたって要らない。

私で要られないあなたなんて要らない。

顔だってみたくないわ。

だって私の全部を奪っていったあなたは、何も知らない顔で長い人生を生きるから。

あの日のきみだけ、君だけで、あなただけに、貴方だけを、あんただけは、

お前だけを、


殺して見たいんだ。

殺して痛んだ。

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『片恋五年、殺意。』 猫墨海月 @nekosumi

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