第3話 欠けていたものが埋まる時
??「人間が『虚無感』から解放された時最初に思うのはただの『無』である。マイナスからゼロに戻すのって実は結構大変なんですよね
前に進むのもものすごくエネルギーが必要で現状維持が精一杯だから……でも、それでも、苦しくても、しんどくても、もし前に進むことが出来たら
それはきっと誇っていいって俺は思う……あの時君が言ってた言葉今なら意味がわかるよ『』。」
語り人「……おや?聞いてたのですか?……これはお恥ずかしい…今聞いてたことはどうかご内密で、ただの私の独り言ですから。」
語り人「では質問を致しましょう。もし、貴方も海翔のように長年の夢が叶ったらアナタはどんな感情を抱きますか?想像で構いません。考えながらこのお話をお楽しみください。」
海翔「…………。」
響也「…おい海翔!!」
海翔「……っ!!」
響也「やべーぞ…ついに当たっちまった!!すげーじゃねぇか!!」
海翔「お…おう。」
響也「どうしたんだよ?お前の念願のあのゲームがやれるんだぜ?」
海翔「いや……なんというか…実感が全然なくて………なぁ響也…俺、本当に当たったんだよな?おれ、あそべるんだよな?」
響也「もちろんだぜ!ちゃあんとメールに書かれてんだろ?むちゃくちゃ悔しいけど…おめでとう!海翔!」
海翔「あぁ、ありがとう!響也!」
響也「んで!メールには何が書かれてんだ?俺にも見せろよー!」
海翔「大丈夫だ、お前に隠れてコソコソ見るマネはしねぇよ。どうせお前も後から来るんだし先に見とこうぜ!」
響也「さっすが海翔!わかってるぅ!!」
抽選結果で当選した俺はこれは現実なのだろうかと放心状態になってしまっていた。
そこを響也が実感させてくれたことには感謝しかない。
俺たちはさっそくメールの続きを読むことにした
『抽選結果のお知らせ』
このたび海翔様は抽選に【当選】されました。おめでとうございます!
さっそくですが申請方法など今後のスケジュールについてお知らせいたします。
本日から三日間の間にお近くのゲームセンターに足を運んでいただき、そこに専門のスタッフがおりますのでそこで申請をお願いいたします。
「申請時に必要な物」
・運転免許証やマイナンバーなどご本人だとわかるもの(学生様の場合は学生証で大丈夫です)
・未成年の方は保護者同意の書類(ダウンロードしていただく必要がございます)
以上の二点です。尚、申請時にはパートナー様とご一緒にお越しください。
また、種族希望に関しましては先着順ではございませんので時間に余裕がある時にお越しください
今回の当選者の申請が完了し、国(種族)が決まり次第後日メールにてお知らせいたします(その時はご本人様とパートナー様別々でお送りいたします)
ログイン出来るまで一週間程お時間をいただきますがどうぞご容赦ください
何かご不明点があればお近くのゲームセンターまでお越しください
このメールアドレスではお答えできません。ご了承ください。
それでは【向こうの世界】で皆様方をお待ちしております。
響也「…すげぇ、最後まで読んだらほんとに海翔当たったんだって思ったぜ。」
海翔「だろ?俺もそんな感じ…やっと実感湧いてきた気がするよ。」
響也「やっとかよ!おせーって!」
海翔「わりぃw」
響也「んでどうすんだよ!この後行くのか?」
海翔「んー。」
響也「?なんで曖昧な返事なんだ?」
海翔「本当は今日行きたいんだが、これが少し厄介なんだよ。」
響也「あぁ、この『未成年の保護者同意書』ってやつか?」
海翔「そう、一応俺達は高校三年生で今年成人になるがまだ誕生日が来ていないから親に書いてもらわないといけない」
響也「別に普通のことじゃねぇのか?パって家帰って親に書いてもらえばいいじゃねぇか。」
海翔「俺は別にそれでいけるんだが問題は……。」
響也「もしかして陽咲ちゃん?」
海翔「アイツの親こんな昼の時間に家にいるかわかんねぇんだよな。そもそも今日は平日で仕事のはずだし。」
響也「ってなると今日中には難しいか…でも!明日とかには出せに行けるだろう?」
海翔「賭けだな。」
響也「賭け?」
海翔「陽咲の親帰ってくる時間がバラバラでさ毎日帰ってくるわけじゃないんだ。」
響也「え?!マジ?!」
海翔「マジマジ、だからアイツの親が居ないときは俺の家で一緒に飯食うんだよ。」
響也「なんかさりげなく幼馴染イチャエピソードを聞いてしまったが今はそんなことどうでもいい!」
海翔「あ、珍しくスルーした。」
響也「どうすんだよ!もし申請受付期間中に陽咲ちゃんの親が帰って来なかったら!」
海翔「そうなんだよなーまさか当たるなんて思ってなかったし。まぁでも…。」
響也「まぁでも?」
海翔「ここまで来たらなんとかなるだろ。」
響也「…お前の謎の自信はどっからくるんだよw」
海翔「当たっただけもうすでに嬉しいよ俺は。」
響也「でもどーせならその先も味わってほしいなぁ。」
海翔「響也……。」
響也「んで、俺に一番に感想教えてくれ!」
海翔「絶対そっちの方が本命だろw」
響也「だって俺抽選申し込めなかったし?それぐらいは要求してもいいんじゃね~?」
海翔「わかったよw」
??「海翔~。」
響也「お!噂をすればなんとやら、陽咲ちゃんじゃんか!」
陽咲「噂?何か話していたんですか?響也くん。」
響也「んー?いやちょっとなー……。」
海翔「おい響也、そこで濁すな。後でめんどくさくなるだろ!」
響也「わりわりw」
陽咲「それでいったい何の話をしていたの?とても気になるんですけど?」
響也「おおっと!そういえばおれ、だいじなようじがあるのわすれてたー!っつーことで俺は先に帰るわ!」
海翔「おい、響也!」
響也「そんじゃ後はお二人でご自由に~……あ、海翔!さっきの約束忘れんなよーじゃなー!」
そういうと響也あっという間に自分の荷物をまとめて教室から出て行った。ったく、こういう時は速いんだよな響也のやつ
陽咲「海翔?そろそろ教えてくれない?さっきからずっと気になってモヤモヤしてるんだけど?」
海翔「あーわりぃ歩きながら教えるわ、とりあえず外でよ?」
陽咲「うん……わかった。」
ー帰り道ー
陽咲「それでどーゆーこと?さっきのって!」
海翔「別に隠すことでもないよ。」
陽咲「じゃあなに?」
海翔「じつは……前言ってた抽選って覚えてるか?」
陽咲「あーずっと前から海翔がやりたいって言ってたゲームのこと?」
海翔「そ。」
陽咲「どうだったの?!」
海翔「おいおいさっきまで気になってたことはいいのかよ。」
陽咲「そっちのほうが優先!だって海翔、春休みの間ずっとソワソワして落ち着いてなかったでしょ?」
海翔「ソワソワは余計だ!……まぁ、結果から言うと当選した。」
陽咲「え?!すごいじゃん!おめでとうー!!」
海翔「ありがと。」
陽咲「ってなんでそんなに暗いの?せっかく当たってんだよ?もっと喜びなよ!」
海翔「いや実はさ……。」
そこで俺はなぜさっきから暗いのか、陽咲のことを話していたのかを話した
陽咲「んーなるほどね。」
海翔「今お前の親の仕事状況知らないし、めいわくとか」
陽咲「え、いるけど。」
海翔「……え。」
陽咲「いるようちの親、しかも母親。」
海翔「マジで言ってる?」
陽咲「マジだよw」
意外だった、予想外だった。しかもいるのは陽咲のお母さんで名前は『椿さん』、陽咲の母親は俺の母親と仲が良く、ゲームなどの理解があるため保護者同意にはもってこいの人物だ
ちなみに陽咲の父親は単身赴任中しかも海外で連絡が取りようがないぐらい忙しい、正直理解があるかと言われたら微妙だったので助かった
陽咲「そういえば、そのゲームのことなんだけど」
海翔「…お、おう……。」
陽咲「海翔のことだから今日行きたいでしょ?」
海翔「そりゃまぁ行きたいけど……。」
陽咲「だよね!ってことで一旦家帰って準備してからいこ!」
海翔「は?」
陽咲「どうしたの?」
海翔「今、家にいるの?椿さん。」
陽咲「なんなら海翔の家にいると思う。」
海翔「は?!俺ん家?!」
陽咲「今日夏美さんと家でゆっくりするんだーって言ってたし。」
海翔「全然聞いてないのだが?!」
陽咲「海翔今日寝坊したから話す余裕なかったんじゃない?たぶん夏美さんも私から話すだろうと思ってそうだし。」
海翔「まじかぁ……。」
陽咲「ってことでさっさと海翔の家行ってサインもらって申請しに行こ!」
海翔「なんかお前俺よりノリノリじゃn」
陽咲「ほらさっさと走る!」
海翔「おい引っ張るなよ陽咲!」
陽咲「へへ、さっきのお返し、今度は私が引っ張る番!」
そうして俺達は登校してきた時と同じように下校も走って帰った。
行きでは気づかなかった満開の桜が祝福してるかのように風に吹かれてなびいていた。
悩んでいた問題も杞憂に終わり、本当にあのゲームをやれるんだ!という気持ちを持ちながら
ー橘家ー
海翔「ただいまぁ~母さんいるー?」
陽咲「お邪魔します。」
夏美「お帰り海翔!あら!陽咲ちゃん!」
陽咲「今朝ぶりです夏美さん。」
夏美「ほんとに椿ちゃんが言ったとおりになったわね!二人でこっちに帰ってくるって!」
海翔「マジでいるんだ椿さん……。」
??「呼んだかな?」
海翔「うわぁあ!」
椿 「あはは!相変わらず反応がいいね海翔君は!」
海翔「毎回毎回会うたび驚かすの止めてください!心臓に悪い……。」
陽咲「私もほどほどにって言ってるんだけど…なんならそれが楽しみらしくて。」
海翔「楽しみにしないでくれ!」
椿 「えぇ~!ちょっとはいいじゃないかー!」
海翔「良くない!……ってこんなこと話している場合じゃなかった!」
椿 「ん?……あぁ同意書を書けばいいんだよね?」
海翔「そうそう!……ん、待ってなんで同意書ってわかったの椿さん?!」
椿 「まぁまぁ。」
海翔「思えば今日タイミング良く俺の家というかこの時間にいるのも謎だし…。」
椿 「そうだね。じゃあ説明しながら同意書書くね!」
海翔「器用すぎんだろ…この人。」
陽咲「それに関しては大いに同意。」
椿 「先に言っちゃうとね、実は今日が抽選結果日だって知ってたの。」
海翔「え?」
椿 「正確にはお願いされて今日休暇とったんだよ。結構頑張ったんだからね休暇取るの。」
海翔「お願いって……まさか。」
椿 「そー陽咲に『絶対この日休暇取ってお願い!』って。」
陽咲「ちょ!母さん!それ言わないって約束!」
海翔「陽咲が……?」
椿 「海翔君がずっとやりたがっていたゲームが出来るかもしれない、もしものためにって。」
海翔「でも同意書の話って今日したはず……?」
陽咲「……そこは予想だったの。」
椿 「未成年も遊んでいいなら必ず同意書とかがくるはずだって……我ながら鋭い娘を持っちゃったみたい。しかもこの話、抽選が出てきた時から言われてたんだよ?」
海翔「なんでそこまで……。」
陽咲「だって海翔昔からそのゲームをやりたいって言ってたし…条件を見てもし私に話がきたらと思って準備してたの……自信過剰になっちゃうけど。」
海翔「……っ陽咲!」
陽咲「……なに?」
海翔「ほんとうにありがとう!!」
気が付くと俺は陽咲の手を取っていた。
まさか陽咲がこんなにも考えてくれてただなんて(流石だなって正直思ったけど)
俺はこんな頼もしい幼馴染を持ったんだって、そう思った。
椿 「私も最初は半信半疑だったんだけどね…でも陽咲が頼み事するなんて初めてレベルで珍しいしそれに……この子にも夢中なものが見つかるんじゃないかって思ったの。これは私の勘!」
夏美「椿ちゃんの勘は当たるからきっとそうね……私から見てもアンタもまた元気になれるんだったら文句は無いかな。」
海翔「母さん……。」
椿 「私も同意書書けたよ!ってことでホラ!2人とも早く行ってきな!」
夏美「夕飯前には帰ってくるのよ!今日はみんなで食べるんだから!」
陽咲「みんなって……もしかして私たちもですか?!」
椿 「そうだよ♪」
夏美「久しぶりに話せて嬉しいし…どうせ椿ちゃんのことだから疲れたーめんどくさいーって料理作らないでしょ?」
椿 「さっすが夏実ちゃん!わかってるね!」
陽咲「母さん……でも、嬉しいです!夏美さんの手料理楽しみにしてますね!」
夏美「いい子過ぎない?!陽咲ちゃんウチに来る?」
椿 「いくら夏美ちゃんでもそれはダメ!陽咲は私の娘ですー!」
夏美「えぇ~?いいじゃない!代わりに海翔あげるから!」
海翔「おいなんか凄いこと聞こえたけど。」
椿 「海翔君を?!やだ迷っちゃう♪」
海翔「思ったより即答!そして迷うな!あと母さんは俺を売るな!」
陽咲「そうだよ!母さんも何言ってるの!」
海翔「……被害拡大の前にさっさと出るか。」
陽咲「それがいいと思う。これはいつまで経っても終わらない。」
こういうやり取りは頻繁に行われていて……たぶん俺達が居ないところではもっとやってる絶対。
普通はウチの子自慢だがあの2人に関してはお互いの子自慢になる。
ようは俺の母さんが陽咲を椿さんが俺の自慢をしてくる。
毎回かなり長時間で毎回俺達が2人を頑張って引き離してるそれぐらい盛り上がっている
なにはともあれ、同意書を手に入れた……あとはこれを持ってゲームセンターに向かうだけ……
これを持つことで要約実感が湧いた
長年の憧れを叶える時ってこんなフワフワした感覚なんだと
俺達が向かうゲームセンターは比較的近いショッピングモールの中にある、よくそこで2人で遊んだのが懐かしい
受付可能店舗にここがあったのもまた運命なのだろうか
陽咲「緊張してる?」
海翔「そりゃそうだろ、ずっと待ち望んでたんだから。」
陽咲「そっか」
海翔「陽咲」
陽咲「どうしたの?」
海翔「改めて……ありがとな。同意書とかパートナーとか」
陽咲「ううん全然!こちらこそありがとう…私を誘ってくれて、頼ってくれて。」
海翔「ここまで来たんだ、さっさと申請してやろうぜ!」
陽咲「うん!」
俺達は一歩前に踏み出した、望むものをつかむために。
『Coler of Historia』~その意味と輝きを探して~「時計の針は動き出す」
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