二人目 〜苦い記憶の呪縛〜
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失敗の記憶ってのは厄介だ。
直らない傷みたいにいつまでも膿を出し続ける。
そんな傷は誰もが一つや二つあるものだろうが、その痛みは本人しか分からない。
そこに踏み込むのはおせっかいでしかないのは分かっている。
それでもその時の僕は必死だった。
「君にしか頼めないんだ。君じゃなきゃダメなんだよ」
「悪いとは思うけどさ、買いかぶりすぎだよ。あたしには無理、他をあたって」
もう何度繰り返したか分からない言葉のラリー。
君はいつもそう言って暗い目でうつむき、立ち去ろうとする。
君が気持ちに蓋をする理由は噂でなんとなく聞いていた。
ぬぐい切れない失敗の記憶と痛み。
そんな過去が今も君をむしばんでいるのだろう。
何とかならないのかな?
それがおせっかいだってわかってる。
僕の言葉と行動がまた君に過去を思い出させて、苦しめているのも知っている。
知っているけど、それを知ったからこそ、君の助けになれないかと思うのだ。
今回のことで、君が立ち直るきっかけになると思うからだ。
君なら立ち直れると信じているからだ。
だから僕はしつこく追いかけた。
「なんとか考え直してくれないかな? どうしても君に頼みたいんだ」
「そういってくれるのはうれしいけどさ、もう失敗するのは嫌なんだ。失敗するのがわかってるから嫌なんだよ。もう関わりたくないんだ。逃げてるってのもわかってるよ。でもあたしは、これ以上誰もがっかりさせたくないの」
それは僕に対しての最後の通告だった。
それから君は一度僕をじっと見つめ寂しそうに笑った。
(わかったでしょ? もうあたしにかまわないで)
君は目でそう語り、また僕から離れていこうとする。
でも僕はその瞳の奥にあるもう一つの感情を知っている。
君は、君自身に一番がっかりしているんだよね
失敗から抜け出せない自分に失望しているんだよね。
だからこそ。
今の君は一人じゃない。
君の失敗に僕ががっかりするなんてことはありえないから。
だからもう一度。いや何度だって僕は君を求める。
一度つながった縁を手放さないために……
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