二人目 〜苦い記憶の呪縛〜

🎬


 失敗の記憶ってのは厄介だ。

 直らない傷みたいにいつまでも膿を出し続ける。 

 そんな傷は誰もが一つや二つあるものだろうが、その痛みは本人しか分からない。


 そこに踏み込むのはおせっかいでしかないのは分かっている。

 それでもその時の僕は必死だった。


「君にしか頼めないんだ。君じゃなきゃダメなんだよ」

「悪いとは思うけどさ、買いかぶりすぎだよ。あたしには無理、他をあたって」


 もう何度繰り返したか分からない言葉のラリー。

 君はいつもそう言って暗い目でうつむき、立ち去ろうとする。


 君が気持ちに蓋をする理由は噂でなんとなく聞いていた。

 ぬぐい切れない失敗の記憶と痛み。

 そんな過去が今も君をむしばんでいるのだろう。


 何とかならないのかな?

 それがおせっかいだってわかってる。

 僕の言葉と行動がまた君に過去を思い出させて、苦しめているのも知っている。


 知っているけど、それを知ったからこそ、君の助けになれないかと思うのだ。

 今回のことで、君が立ち直るきっかけになると思うからだ。

 君なら立ち直れると信じているからだ。


 だから僕はしつこく追いかけた。


「なんとか考え直してくれないかな? どうしても君に頼みたいんだ」

「そういってくれるのはうれしいけどさ、もう失敗するのは嫌なんだ。失敗するのがわかってるから嫌なんだよ。もう関わりたくないんだ。逃げてるってのもわかってるよ。でもあたしは、これ以上誰もがっかりさせたくないの」


 それは僕に対しての最後の通告だった。

 それから君は一度僕をじっと見つめ寂しそうに笑った。


(わかったでしょ? もうあたしにかまわないで)


 君は目でそう語り、また僕から離れていこうとする。

 でも僕はその瞳の奥にあるもう一つの感情を知っている。

 


 君は、君自身に一番がっかりしているんだよね

 失敗から抜け出せない自分に失望しているんだよね。


 だからこそ。

 今の君は一人じゃない。

 君の失敗に僕ががっかりするなんてことはありえないから。


 だからもう一度。いや何度だって僕は君を求める。


 一度つながった縁を手放さないために……





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