第4話



重次郎、渋谷タワーへ

重次郎が渋谷タワーに到着すると、そこは異様な光景が広がっていた。本来、透明なガラスでできたタワーの壁は、不気味な黒いモヤに覆われ、まるで巨大な影がタワー全体を飲み込んでいるかのようだ。


「やはり、これはただのオーバーフローではないな……」


重次郎は独りごちる。オーバーフローとは、タワーに蓄積されたエネルギーが許容量を超え、不安定になる現象だ。この黒いモヤは、エネルギーが負の感情や記憶と結びついた「悪意のオーバーフロー」を示していた。


タワーのエントランスには、すでに他の家の者たちが集まっていた。彼らは皆、重次郎と同じように、特殊な能力を持つ一族の者たちだ。その中でも、重次郎は突出した実力を持つ「Sランク」の能力者であり、他の者たちから尊敬と警戒の眼差しを向けられている。


「重次郎、来たのか」


そう声をかけてきたのは、重次郎の旧友であり、ライバルでもある 風間かざま だった。彼は風を操る能力を持ち、常に冷静沈着な男だ。


「ああ、風間。どうだ、この状況は」


「俺の風でも、このモヤは吹き飛ばせない。内部に入って、原因を突き止めるしかないだろうな」


「そうだな。行くぞ」


重次郎と風間、そして他の能力者たちがタワーの中へ足を踏み入れる。内部は、外観の不気味さとは裏腹に、静まり返っていた。階段は黒いモヤが渦巻いている。


その時、重次郎のスマートフォンが震えた。画面には、清香からのメッセージが表示されている。


「あなた、気をつけて。タワーのコアに、異質な力が集まっているわ。何かのゲートが開こうとしているのかもしれない」


ゲート?重次郎の脳裏に、ある可能性がよぎる。このオーバーフローは、タワーのエネルギーを利用して、この世界とは別の次元の存在を呼び出そうとしているのかもしれない。それは、かつて一族が封印したはずの、恐ろしい存在だ。


「風間、これは……」


重次郎が何かを言いかけると、突然、床が崩れ、彼らは階下へと落ちていった。

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世界最弱が世界最強へ至る @Soee1

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