明智くんと望月さん-人生最大の大ピンチ-
みららぐ
①:バカな男友達に告白された。
「俺、望月さんが好き!」
「!」
夕暮れの別れ際。
不意に背中を呼び止められて、何かと思って振り向けば、真っ赤な顔をした明智くんにそう言われた。
いや、彼の顔が赤かったのは夕焼けのせいもあったのかもしれないが、突然の何の予想もしていなかった一言に、私の顔はただただぼっと赤くなった。
彼とは去年、高校一年生の夏休み明けの席替えでたまたま隣同士になり、そこからゲームの話をメインによく話すようになった。
別に学校が休みの土日に二人で出かけたりするような仲ではないが、今日はたまたま帰り道に出くわしたから、なんとなく「一緒に帰る?」となった。
明智くんは、こう言っては何だが校内の生徒の中で一番の「バカ」である。
今年の春の中間テストでは高校入学以来ずっと学年最下位をキープし、
クラス全体が少し落ち込んだ雰囲気になっているのを盛り上げようとして寒いギャグを披露し皆にドン引きされ、
授業中では、先生が1時間のうちに何回自身の眼鏡を上げるかのかを数えることに情熱を燃やし、
校内で女子更衣室を覗ける場所を発見して、休み時間には毎回教室から遠く離れたその秘密のスポットに足を運ぶほどの「バカ」である。
今度はどう間違ったのか、そんな彼が私につい今ほど「告白」をしたのである。
一瞬、「冗談か」とも思ったが、明智くんは確かにバカだけど嘘を吐くような男ではない。
それに明智くんの表情が何だかいつになく真面目なそれになっていて、「本当なんだ」とわかった瞬間、顔から火が出そうなほどに恥ずかしくなった。
恥ずかしながら、私はそんな彼の想いに一切気が付かなかったし、「告白」というものをされたことすら実は生まれて初めての出来事である。
しかし。
私は実はこの17年ほど生きてきたなかで、「初恋」という感情すら味わったことがないから、明智くんのその言葉に頷くわけにもいかない。
そう思って、
「…ほ、本気で言ってるの?」
「もちろん!」
「……ごめん」
「!」
「そういうことは、ちょっと…」
「…っ」
私、恋愛とかよくわからないから。
しかし、私がそう言おうとした瞬間。
突如、その言葉を遮るように明智くんが言った。
「ま、待って!」
「?」
「た、確かに俺…
「!」
俺、いくらでも…待てるから。
明智くんがあからさまに照れてそんなことを言うもんだから、その瞬間それが私にも伝染して思わずお互いに照れた。
「…~っ、もう、うざい!」
「!」
「私、帰るから!」
「あっ」
さよーなら!
私は明智くんにそう言って背中を向けると、逃げるようにその場を後にした。
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