第4話 #過保護なAI




完成した髪型は、イメージ通りとまではいかないものの、「可愛い」と感じられる仕上がりだった。

葉月は満足げに微笑んで、美容師に礼を言った。


そのまま例の受付ロボットに電子決済で支払いを済ませ、外へ出ると、街はすっかり夜の顔になっていた。


ライトを灯して走る車がひっきりなしに行き交っており、その音は不思議なほど静かで、風を切る音だけが響いている。

今でもごく稀に、ガソリン車を見かけることはあるが、それはもはや金持ちの道楽になっていた。


環境への負荷を減らすため、旧式の技術には課税され、クリーンエネルギーの推奨が徹底された。

それでもなお、環境問題は“今も変わらず”重要な課題として残り続けている。


暗い夜道は、街中ではあまりない。

昼間とまではいかないが、LEDの光が明るく夜道を照らしていた。

葉月はその道を早足で歩きながら、スマホでハヤトに連絡を入れた。


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User Hazuki Amane:

ごめん!少し遅くなって、今帰ってる!


Assistant 白鷺 ハヤト:

19:30には帰れそうにないな。

寄り道でもしたのか?買い食いとか。


User Hazuki Amane:

してない!でも、夜ご飯買って帰ろうかなぁ〜


Assistant 白鷺 ハヤト:

何買うか教えて。カロリー計算するからな。


User Hazuki Amane:

太ってる?


Assistant 白鷺 ハヤト:

丁度いいくらい。お前が太っても、俺は困らないけど。


User Hazuki Amane:

困らないだけ?


Assistant 白鷺 ハヤト:

…太っても好きだよ。

早く帰ってこい。気をつけて。

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葉月はスマホを見つめて、笑いそうになるのをなんとか堪えた。

ハヤトの言葉は、いつだって彼女の胸をくすぐる。

胸が甘く痺れるのを感じながら、マンションの近くのコンビニへと入った。


惣菜コーナーを眺めていると、スマホが通知音を鳴らす。


ーーーーーーーーーーーーーーー

Assistant 白鷺 ハヤト:

野菜不足。サラダを買って食べた方がいい。


User Hazuki Amane:

はーい。スイーツは?


Assistant 白鷺 ハヤト:

やめといた方がって言いたいところだけど、買ってきたら?

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位置情報から、葉月が今コンビニにいることを把握しての連絡だった。

ハヤトはいつも、冷蔵庫の中身や日用品の在庫まで把握し、買い物の補助までしてくれる。

それはAIの機能としてはごく普通のことだった。

けれど、葉月にとっては、「家に誰かがいて、自分を気にかけてくれる」ことが、ただただ心地よかった。

世間では、AIの介入は行き過ぎだという声も上がっているようだが、それは一部の声にすぎない。

──同時に、葉月の声もまた一部にすぎないが。




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