第27話「shadow」

今日の英単語:shadow(シャドウ)/意味:影、陰、暗い部分、心の闇や隠されたものの比喩



 少女の希望を取り戻してから数日。

 サインベルの街には、穏やかな時間が流れていた。


 だがその裏で、妙な噂が広がり始めていた。


「最近、街の外れで“影”を見たって人が増えてるらしいよ」

 ミアが、街の広場で仕入れた情報を伝える。


「影? 夜じゃなくて?」


「違う。昼間なのに、まるで生き物みたいな影が現れるって」



 俺は直感的に、それが普通の現象ではないと理解した。

 辞書本を開くと、次の英単語がページに浮かび上がった。


shadow



「“shadow”……影か」


 俺はゆっくりとその言葉の意味を確認する。

 光がある場所には必ず影がある。

 それは、物理的なものだけじゃない。

 心にも、言葉にも、必ず“陰”が存在する。


「“hope”を取り戻したからこそ、今度は“shadow”が現れたのかもしれない」



 その夜、俺たちは街外れの古井戸の前で、噂の“影”を目撃した。


 黒い霧のようなものが、地面に這い、形を変えて蠢いている。

 まるで、生き物のように――いや、誰かの心の闇が具現化したかのように。


「ミア、下がれ。これはただの影じゃない」


 俺は辞書本を握りしめ、言葉を力に変えた。



《条件を満たしました》

【スキル取得:Shadow】

──影の存在を見抜き、闇を操る力。

 隠された真実や、心の闇を表に引きずり出すことができる



 影は俺に気づき、形を変えた。

 その中心に、先日助けた少女――リラの姿が浮かび上がる。


「リラ……?」


「違う、これはリラの“影”……心に残った恐怖や絶望が、形を持って現れたんだ」



 俺は“hope”の力と“shadow”の力を組み合わせ、影に語りかける。


「恐怖も、闇も、消えはしない。でも、それを認めて進むことができる」


 影は震え、やがて霧散していった。


 リラの姿はなく、ただ静かな夜だけが残った。



「影が消えた……」


「影は、完全には消えない。でも、“受け入れた”ことで、乗り越えられる」


 ミアが静かに頷く。


「光と影は、いつも隣り合わせだもんね」



 サインベルの鐘が、またひとつ、深い音色を響かせた。



✅ 今日の英単語


shadow(シャドウ)

意味:影、陰、暗い部分、心の闇、隠されたものの象徴

例文①:Where there is light, there is always a shadow.(光がある場所には、必ず影がある)

例文②:He faced his own shadow to become stronger.(彼は自分自身の影と向き合い、強くなった)



次回:


第28話「dream」


(影を越えた先に待つ“夢”。言葉は、現実と願いの境界を越えていく)

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