第21話「next」

今日の英単語:next(ネクスト)/意味:次、次に来るもの、未来の一歩



 光が収束し、俺たちは《記録の禁書庫》から外に出ていた。

 空はすでに夕暮れで、街道の向こうに、燃えるような陽が沈もうとしている。


 それはまるで、一つの章の終わりを告げているかのようだった。


「……出られた、ね」


「うん。でも、出ただけじゃ終わりじゃない。“次”が始まる」



 俺はそっと、辞書本を開く。

 表紙に刻まれた文字が、以前よりはっきりと見える気がした。


WORDS ARE POWER. POWER MOVES THE WORLD.

(言葉は力。力は世界を動かす)


 次のページに、ひとつの英単語が浮かび上がった。


next



「次って、すごく当たり前の言葉だよな」


 そう言いながら、俺は自分の靴を見つめた。


「でも、“次へ進む”って、実は怖いことだ。

 今までのものを置いて、まだ知らない場所に踏み出すってことだから」



 そのとき、遠くから一陣の風が吹いた。

 誰かの叫ぶ声。魔物の咆哮。火の匂い――。


 俺たちは反射的に駆け出した。


 そこにあったのは、小さな村。

 すでに襲撃を受け、家は焼かれ、人々が避難していた。


 そして、その中心に――レオンの姿があった。



「レオン!? どうしてここに……!」


「お前が“choice”で選ばなかった道だ。ここに来るかどうか、俺は“見届けたかった”」


「……!」


 あのとき、俺は“力”を選んだ。

 だからこの村を守れなかった。それは、俺自身の選択の結果だった。


「責めたりはしない。だが、次は――お前がどうするかを見せろ」



 俺は前に出た。


「次は――もう、迷わない。

 俺が歩いてきた道も、選ばなかった道も、全部抱えて、前に進む」


《条件を満たしました》

【スキル取得:Next】

──“次”の可能性を引き寄せる力。失敗も選択もすべて糧とし、前進することでスキル効果・記憶・力が進化する



 その瞬間、俺の手に持っていた辞書本が変化した。

 表紙が銀に輝き、まるで“生きている書物”のように、ページが勝手にめくられていく。


「この本……進化した?」


「うん。たぶん、次の段階に入ったんだ。“言葉を覚える旅”じゃなく、

 **“言葉で未来を選ぶ旅”に変わったんだと思う」



 レオンが静かに笑った。


「……お前は、次の“ワードマスター”だ。言葉で世界を動かす資格がある。

 だが、それだけでは足りない。“次”の試練は――もっと厳しい」


「覚悟はできてる。

 俺は、進む。何度でも、次へ――nextへ」



✅ 今日の英単語


next(ネクスト)

意味:次、次に来るもの、未来の一歩

例文①:What’s next?(次は何?)

例文②:He moved on to the next chapter of his journey.(彼は旅の次の章へと進んだ)



次回:


第22話「bridge」


(過去と未来をつなぐ“橋”。言葉の力が、初めて人と人の隔たりを越える)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る