第18話「record」

今日の英単語:record(レコード)/意味:記録、記録する、証言、記憶



 俺たちがたどり着いたのは、**《記録の禁書庫(レコード・ヴォルト)》**と呼ばれる古代の遺構だった。

 黒鉄でできた扉の上には、英語でこう刻まれていた。


“Only those who choose may record.”

(選んだ者のみが、記すことを許される)


「……ここに、“言葉の力”の起源が記されているのかもしれないな」


 扉に触れると、俺のスキル《Key》が反応し、ゆっくりと門が開いた。

 その向こうには、数え切れないほどの巻物と、記録石(レコードストーン)、そして古びた本の山。



「すごい……ここ、本当に全部“記録”なの?」


「“記録”ってのは、“生きた言葉”の集まりなんだ。誰かが“伝えたい”と願った結果だよ」


 ミアは古文書を手に取り、そっと開いた。

 中には、ひとつの単語だけが延々と繰り返し書かれていた。


forgive forgive forgive forgive forgive——


「許し……? これ、誰かの“想い”……」


「記録は、感情そのものなんだろうな。文字になった瞬間、誰かの記憶は“言葉”になる」



 そのとき。

 館内の空気が変わった。


 記録石の一つが淡く光り、浮かび上がったのは、古代の映像だった。


 青年が戦場に立ち、仲間を喪い、絶望の中でただ一語を残していた。


「record it. この痛みを、記せ。二度と忘れないように……」



 その言葉を聞いた瞬間、俺の辞書本が震えた。


《条件を満たしました》

【スキル取得:Record】

──目にしたもの、聞いたもの、感じたものを“記録”として封じる。記録は後に“引用”や“伝達”として使用可能



「……ハルト。記録って、過去を残すだけじゃないんだね」


「うん。“次の誰か”に繋ぐためにあるんだ。

 それが、“英単語”の本質の一つかもしれない」



 禁書庫の最奥で、俺たちはさらに一つの“古文書”を見つけた。

 そこには、はっきりとこう記されていた。


WORD ORIGIN CODE – LEVEL 1

(単語起源コード:レベル1)


 この文書は、特別だった。

 辞書本が反応し、強く発光する。


《称号取得:Word Seeker(言葉を探す者)》

《単語起源記録へのアクセスが可能になりました》



「……ついに来たな」


「うん。これからは、“英単語”の意味だけじゃなく、“どこから生まれたか”も学べるんだ」


 英単語は、単なる翻訳じゃない。

 時代、文化、感情、そして――人の想いが詰まっている。



✅ 今日の英単語


record(レコード)

意味:記録、記す、記憶、証言

例文①:They kept a record of their journey.(彼らは旅の記録を残した)

例文②:Some records can change the future.(記録の中には、未来を変えるものもある)



次回:


第19話「origin」


(言葉の“始まり”を追う旅が、世界そのものの秘密へと近づいていく)

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