金曜の夜。
彼に裏切られた私は、青梅を片手に繁華街をさまよっていた。
投げ捨てた感情も、青梅も、どこにも届かない――そう思っていたのに。
拾い上げたのは、角を持つ青年。
どこか涼やかで、でも不器用なその手は、なぜか私の涙を拭った。
その瞬間、世界が静かにひっくり返った。
辿り着いたのは「水敖郷」。
和でも中華でもない、けれどどこか懐かしく優しい異世界。
白粥の香り、紅の輝き、そして曜日ごとに色を変える衣装たち。
すべてが知らないはずなのに、心の奥で「居場所」のように感じられる。
不本意に始まったはずの異世界滞在は、
失恋の痛みすら柔らかく包み込んでいく。
これは、偶然辿り着いた世界でようやく「自分」を取り戻していく、
大人のための異世界物語。