異種族多妖のカオスな毎日
弥生今花
他己紹介
ドサドサドサドサッ
ゴッ
「痛たた・・・。」
とある古めかしい部屋の一角でこれまたとあるエルフが目を覚ました。
大量に落ちてきた本に頭をぶつけてである。つまり彼女は今本に埋もれている。
只今の時間は朝6時。ちょうど人々が起きだし、仕事や通学に向け支度をしだす時間帯なのだが…。
「ふぁぁ~。あ…。昨日家帰り忘れた…。」
このエルフ、シニエはもう職場にいるようだ。
そう、ここは彼女勤める帝都公共図書館である。
シニエは昨日、この図書館に自分で勝手に作った部屋で『魔導書』を読みあさっていたのだ。
まず公共の図書館に勝手に自室を作っていること自体でシニエのヤバさはわかるのだが、まだ誰にもばれていないので本人はいいと思っている。
「ん~。面倒くさい~。なんで仕事なんかあるんだぁ~。一生甘い蜜だけ吸っていたい~。」と
呟き、やっと今、冬眠後のクマのように本の山から起き上がったシニエである。
そして立ち上がり、彼女以外誰もいない部屋で
「まぁどうせ仕事しないけどね。」とにやりと笑った。
そしてその繊細な白い指をパチッと鳴らした。
すると、さきほどまで彼女の上に覆いかぶさっていた本達が一斉に様々な場所へと移動していった。
もうお分かりだろうが彼女は、シニエは魔法使いである。
「さぁてさぁて、今日の朝ごはんはぁ、なににしよっかなぁ~♪」
と陽気に鼻歌を歌っているシニエ。
此処で少し彼女について説明しておこうと思う。
彼女はまぁ先にも言った通り魔法使いであり一介の図書館司書である。
この世界にはエルフという長命の種族がいてシニエもその一人だ。
と説明をしている間にも彼女は朝ごはんを食べ終わってしまった。
たぶんいつも通りパンだけ食べた感じだろう。
お腹が空かなければ何でもいいと思っているシニエである。
そしてまた指をパチッと鳴らした。
今度は大量の本達がぞろぞろとシニエの周りにあつまってきた。
そしてシニエのいる机にきれいに並んでゆく。
そして片っ端から読んでゆくシニエ。
彼女は本と言う本が大好きなのである。
図書館の館長さんは8時半ごろに図書館に出勤する。それまでシニエは自由に本を読んでいる。
彼女が本を読み終わるごとにそのほんはふわりふわりと元の棚へ戻っていく。
そんな風にして時間はあっという間に過ぎていった。
「ふわぁぁぁ。今日は結構読めたなぁ。って、もうちょっとで館長さんくるじゃん!まずい!」
そういって早急に本を片付け図書館の裏口から出ていく。
因みに表口から出るとお金持ちの貴族なども多く住む優雅な街並みが広がっている。
シニエはいつも9時に出勤しているという認識になっているため、
それまでシニエは貧民街の方を散歩していた。
(相も変わらず、この町はずっと荒れているなぁ。)
あちこちで
罵声や怒号が飛び交っている。この町では強いものが一番なのだ。
シニエもたまに面倒くさい奴らに絡まれるがガン無視して進む。
暫く歩いていると
路地の隙間から寒そうにしている子供を見つけた。
まだ5つくらいである。シニエはその子供にばれないように遠くからもってきたパンのバスケットを浮かせて届けた。つまり魔法で届けた。そして今日もまた人助けをしたと勝手に解釈して帰っていった。
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