『逆さ桜』はS県K市の■■小学校敷地内に位置する、樹齢約100年の桜の木です。

　物理的・化学的損傷を受けない点と通常に比べて寿命が長い点以外は、一般的なソメイヨシノと同じ特性を有しています。

　平常時は周囲への影響を及ぼさない不活性状態にありますが、以下の条件を満たすことで活性状態となり、異常性を発現します。

・深夜23時～翌3時の時間帯

・晴れた満月の日である

・開花した状態である

・■■■■■■■■■■■■

　現在、実験の予定がない場合は、人工降雨装置を用いて不活性状態を保つことで民間人の接触を防いでいます。

　活性状態となった『逆さ桜』の根元に埋められた物質は、日の出と同時に性質の一部が反転します。

　同じ種類の物質を埋めた場合でも、異なる結果が得られることが確認されています。詳しい法則性については調査中です。

　『逆さ桜』の影響を受けた物質が再度反転する事例は確認されていません。翌年埋め直す・何年も埋めたままにするなどの行為により異常性の影響下に複数回晒された場合でも、反転が発生するのは一度きりです。

・事例1

入力：20世紀末に流行した世界滅亡の予言を記した書籍1冊

出力：22世紀のテクノロジーと文化をまとめた事典上下巻1セット

反転の対象：絶望を予測した書物と希望を記録した書物の対比と思われる。

・事例2

入力：子供用の水鉄砲

出力：グロック17。水鉄砲の所有者だった児童が誤って発砲し、■人が重軽傷を負った。

反転の対象：真贋

・事例3

入力：重さ約200gの石

出力：同質量の宝石

反転の対象：市場における価値

・事例4

入力：重さ約2kgの石

出力：花や苗木

反転の対象：日本神話の一節に基づいて変化が起きたと思われる。

・事例5

入力：重さ約2kgの石

出力：消失。定点カメラには日の出と共に土が激しく飛散する様子が確認された。

反転の対象：分子運動の穏やかな固体から激しい気体への状態変化。これにより、体積が爆発的に増加したと思われる。

・事例6

入力：白紙の紙

出力：『逆さ桜』についての既知の情報をまとめた報告書

反転の対象：完成度、進捗

・事例7

入力：実験用のマウス1匹

出力：表皮が裏返ったマウス1匹。生命活動に異常は見られなかった。

反転の対象：物理的な表裏

・事例8

入力：成人女性の■■

出力：■■■■■■■

反転の対象：■■。同時に■■も反転している。

・事例9

入力：事例8の出力物

出力：変化なし

〈補遺1〉

　事例1~3, 8は『逆さ桜』が管理下に置かれる以前に、民間人が異常性を利用したことで発生したインシデントです。

〈補遺2〉

　事例8, 9の詳細については、アクセス許可を得た上で音声記録を再生してください。