彼女はきっと超能力者

メガネ付き

プロローグ

 超能力。

 物を浮かす、心を読む、空を飛ぶ、未来を視る、一瞬で違う場所へ移動する、など。科学的に立証できないのにも関わらず様々な事象を引き起こし、通常の人間にはまず不可能な特殊な能力のことを差す。

 それら超常的な力を持つ者のことを超能力者と人は言う。


 眠気が取れないが俺は学生である。勉強が本分である身のため、ベッドから起きないわけにはいかないし、学校の机に突っ伏して寝るわけにもいかない。

 俺──田中正人は眠気に耐えながら教室に辿り着いた。


 「おはよう田中君」

 

 「おはよう柊木さん」


 挨拶してくれた彼女の名前は柊木優香。同じ学校の同級生で俺の隣席の女の子。童顔でいて端正な顔つき。身長は低く着痩せするタイプ。肩までのショートヘアーで色は。入学式で見た彼女の白髪にこのクラスだけではなく他クラスと他学年、そして俺も驚いた。

 彼女は成績優秀で周りからの信頼も厚く、告白もされるくらい男子人気が高い。当初は隣の席?やったー!なんてはしゃいでいたのだが······。


 「朝は鯖の煮付けだった?いいなぁ」


 「ははは、美味しかったよ」


 俺は隣席の女の子と軽く談笑し、席に座る。そして冷静になる。


 (······怖っっっっわ!)

 

 朝は鯖の煮付けだった。正解だよ。ヒントも無しに当てたのが恐怖でしかない。

 しかし、ここで表情を崩してはいけない。、俺ごとき指先一つで潰される。


 (······潰される、と考えても潰されないのは──)


 相手の心を読む能力、読心術テレパシーには弱点があるのだろう。ここは学校。もっと言えば学校だ。人間と同じ数だけある思考の海で溢れているこの場において、特定の誰かの思考を選んで読むのは不可能······な、はずと確信が持てない推測をする。

 朝食を言い当てられたのはきっとアレだ、千里眼的なやつで覗いていたに違いない。──それはそれで怖すぎるが──今気にしているのは読心術。なので大丈夫だと思うが悟られないよう気を付けるに越したことはない。


 「······あっ、やべ」


 などと考えながら一時限目の準備のため、筆箱からシャーペンを取り出そうとして、落とした。

 落とした場所は俺と柊木さんの席の間。カァン、と誰の気にも止めない小さな音が床から聞こえた。


 (······面倒だなぁ)


 落としたら拾うだけの単純なことだし、落とした場所はすぐ横だから立ち上がらなくていい。しかしわざわざ体勢を変えてまで拾う行為を面倒だと感じてしまう。我ながら気の小さい性格だこと。

 

 「よっ──え?」


 拾おうとした一秒にも満たない僅かな時間。


 「はいこれ、さっき落としたよね」

 

 「──···あ、うん!ありがとう」


 「いえいえ、どういたしまして」


 柊木さんに感謝しつつ、受け取ったシャーペンをまじまじ見る。


 (······温もりが、ない)


 中々気色悪いことを考えたが待ってくれ、違うんだ。決して柊木さんの体温を感じ取ろうとしたわけではない。

 アレは幻覚ではなかった。柊木さんは確かに拾ってくれた。拾ってくれたのはいい。しかし、


 (、よな······?)


 柊木さんはシャーペンを人差し指だけで拾った。使、だ。最早これは拾ったのではなく、くっつけたという表現が正しい。

 これは物を浮かす能力、念能力サイコキネシスだ。手を使わずスプーンを曲げたりするアレ。俺の身体を物理的に潰せるアレと言い替えてもいい。


 「······」


 俺はチラリと柊木さんを見る。

 

 「~♪」


 表情は明るく、ワイヤレスイアホンで音楽を聴いている。ご機嫌だ。ご機嫌なうちはまず大丈夫だろう。俺の身体はひしゃげない。

 そのために──

 

 (柊木さんに悟られないようにしなければ)


 彼女はきっと超能力者。力を誇示しないのはそれを秘密にしているからだ。その秘密を知っているとバレれば、俺の命が散ることになるのは明白だ。

 平穏な学生生活を送りたいのならば、気を付けるしかない······!

 

 これは隣席の彼女が超能力者だと知っている俺と彼女の物語。








 

 「······んふふ♪」

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