腕枕

芒川良

腕枕

望めばすぐに転落できる屋上が見えたのち遠のく忽ちに


どの夢で ふいに始まる輪唱があなたからでないと言いきれた


煙のないところに火はない、とも言えて想像のわたしの変死体


注射痕 あなたは同い年だから腕枕のさらなる退屈を


なんで─記憶は─都合よく目を見て話す言葉のように曖昧だろう


あなたにはあなたの論理があることも歌唱の溺れそうな気持ちだ


爪を剥ぐ拷問も現実のもの イメージはただ峻烈に現実に内包されたがる


エスカレーターの手すりが濡れていてわたしは誰のものでもないが


涙不足でどうして恋がしたくなる窓にはその向こうが映されて


ゆめみたいな、そういう髪飾りはとうに傷んでわたしたち花の名前

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腕枕 芒川良 @susukikawa

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