前のエピソード――第23話

村の娘たちがそれぞれの夢を追い、互いに支え合いながら生きている姿を見るにつけ、俺は日々、満たされた気持ちで過ごしていた。もはや、前世の記憶が、遠い夢のように感じられる。日本の会社員だった「俺」は、この異世界での「アレン」という存在に、完全に溶け込んでいた。

ある晴れた日、俺は一人、村の近くの丘に登っていた。眼下には、俺が転生してから少しずつ築き上げてきた村が広がっている。緑豊かな畑が広がり、手入れされた水路が光を反射している。小屋からは、娘たちの楽しそうな声が聞こえ、煙突からは穏やかな煙が立ち上っていた。遠くには、交易に向かうルナの作った荷車が見える。

転生当初の絶望や戸惑いは、もうどこにもない。飢えに苦しむことも、粗末な小屋で寒さに震えることもなくなった。代わりに、温かい食事があり、丈夫な服があり、そして何よりも、俺を信頼し、頼りにしてくれる大切な仲間たちがいる。

「アレン兄様！」

ふいに、下からミリアの声が聞こえた。振り返ると、ミリアが息を切らしながら丘を駆け上がってきている。彼女の後ろには、フィリアやフローラ、ルナ、マリナ、そしてレイラも続いていた。皆、何かを伝えたいような、少し興奮した顔をしている。

「どうした、みんな？」

俺が尋ねると、ミリアが手に持っていた小さな花の束を差し出した。

「これ、村の裏で見つけたの。アレン兄様に、あげようと思って！」

ミリアの笑顔は、太陽の光を受けてキラキラと輝いていた。他の娘たちも、俺に暖かい視線を向けている。