第3話 興奮は簡単に居なくなる
「能力って…?ないけど…てか俺に能力があるの?能力が…使えるって?」
さっきまで戸惑いが隠せなかったのに、自分にもあると分かった途端、隠す気もなくなった。
「多分これからだと思う。ほら、俺の方がちょっと誕生日早いじゃん」
「な、なるほどねー!そっかぁ…能力!どんなのだろうねぇ。空飛べるとか!欲しいなぁ」
出雲はほとんど中身の残っていないコップで口元を隠しながら笑っていた。
「松島テンション上がりすぎでしょ!でも気持ちは分からんでも無いよ」
なんだか世界が広がった感じがした。そこから2人で歌いまくったわけだが、僕のテンションが高まっていたこともあり、大いに盛り上がった。
「じゃあ、また明日。能力分かったら言えよ」
「うん、伝える」
ほっといても僕は言いたくなって出雲に言ってしまう気がする。
帰ってから、そういえばと思って親に聞いてみた。
「母さんって能力者だったりする?」
「え?ちょっと、なんで知ってんの?」
何かダメな空気を感じた。
「出雲から聞いた」
「え?出雲君から!?」
「なぁんで言っちゃうかなーまぁどうせ1ヶ月後には言うつもりだったけど。先に知っちゃったら能力がとんでもないことになる可能性があるからダメって言わなかったかなー」
僕は、正直に言うとワクワクした。だって何かかっこいいじゃないか。とんでもないことになるって。
「とんでもないことって…?」
「能力発生の瞬間はわからないの。ただその時やりたいって思ったことができるようになる。能力が発生するって分かっちゃったらさ、世界が滅べば良いのになんて少しでも思ってその瞬間能力を手に入れちゃったら危ないわけ。出雲君は遠くに落ちてるゴミを拾いたくて…みたいな感じじゃない?ま、とりあえず。明日から学校はおやすみ。能力を使えるまでは行っちゃダメだからね。出雲君も呼ばないでよ。迷惑かけたら大問題だし」
明日から学校はおやすみ。その言葉だけがどうしても飲み込めず、喉につっかえる。理由は分かるのに、どうしても納得が出来ない。
「学校、本当に行っちゃダメなの?」
「うん。仕方ないよ。誰か傷つけちゃったらダメでしょ?」
分かるのに、言ってることは分かるのに。インフルエンザで学級閉鎖になったら絶対に喜ぶのに。何故か学校に行きたいと願う自分に驚いていた。
「能力が早く出て、問題がなさそうだったらその日にでも行けるから。とんでもないこと願ったら、人生変わっちゃうから気をつけなよ」
「…分かった」
僕はリビングの扉を閉める時、いつもより強い音を出してしまった。
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