薬草採集するモブですが、気づいたら美少女たちに囲まれてました

仙道

第1話

 眩い光が俺の目を焼いた。思わず顔を背け、手のひらで覆い隠す。チカチカと残る残像が消え、ゆっくりと目を開けた。


 見慣れない天井があった。木材の梁がむき出しになった質素な造りで、土壁にはところどころひびが入っている。昨夜、残業で会社に泊まり込んだはずだ。疲れて意識を失ったのだろうか? いや、それにしてもこの感覚は……。


 体勢を変えようとすると、全身がぎこちなく軋んだ。まるで自分の体ではないかのようだ。恐る恐る手を持ち上げる。そこにあったのは、見慣れない、ごつごつとした男の掌だった。


 混乱が脳内を駆け巡る。これは夢なのか? だが、あまりにも現実味があった。指先に触れるシーツの粗い感触、遠くから聞こえる鳥の鳴き声。


「……は?」


 絞り出した声は、自分のものではない、若く、少し掠れた男の声だった。


 慌てて飛び起きようとして、ベッドから転がり落ちる。体中が痛む。どうやら、かなりの無理をしたらしい。


 散らかった部屋を見回す。粗末な木製の机と椅子、使い込まれた食器、そして部屋の隅には、見たこともない薬草が山積みにされていた。


 これは一体どういうことだ。まさか、よくある異世界転生というやつか? 俺は平凡な会社員で、死んだ覚えもない。巻き込まれたとしたら、あまりにも理不尽だ。


 冷静になろうと深呼吸をする。こういう時こそ、情報を集めるしかない。自分の身に何が起こったのか、この体が誰のものなのか。


 ふと、頭の中に声が響いた。声、というよりは、直接脳に情報が流れ込んでくるような感覚だ。


『鑑定』


 その単語が浮かんだ瞬間、視界の隅に半透明なウィンドウが現れた。


――――――――――

名前:ヨシュア

種族:人間

職業:薬草採集者

スキル:鑑定

状態:疲労、軽度の栄養失調

――――――――――


 ヨシュア? 薬草採集者? スキル? まさに異世界転生のテンプレじゃないか。まさか本当にこんなことが起こるとは。


 「鑑定」というスキルがあるなら、まずは自分の状況を把握すべきだ。


 ウィンドウの指示通りに心の中で「鑑定」と唱えると、自分の情報が再度表示された。どうやらこの体は「ヨシュア」という名の薬草採集者らしい。疲労と栄養失調……。道理で体が重いわけだ。


 次に、部屋の隅に積まれた薬草に手を伸ばし、「鑑定」と唱えてみる。


――――――――――

名称:回復草(かいふくそう)

効果:傷の治癒を促進する

品質:並

――――――――――


 おお、これは便利だ。いちいち薬草図鑑を広げる必要もない。


 とりあえず、まずは体力を回復させるのが先決だろう。部屋には水差しと、干からびたパンがあった。これらを口にし、鑑定スキルで薬草を探しに外へ出ることにした。


 家の外に出ると、広がるのは見渡す限りの森だった。木々の葉が風に揺れ、独特の土の匂いが鼻腔をくすぐる。どこからか、聞き慣れない鳥の声が聞こえてくる。


 俺は薬草採集者「ヨシュア」として、この異世界で生きていくしかない。

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