怖い話
@Densama114
視線
美穂(みほ)は、都内で一人暮らしをしているOLだ。
仕事から帰ると、スマホをいじりながらご飯を食べ、シャワーを浴びて寝るだけ。
特別なこともない、つまらない日々。でも、美穂はそんな“普通”に安心していた。
ある夜、ベッドに入りスマホをスクロールしていた時だった。
SNSにこんなDMが届いた。
「今日も帰り道、後ろ姿が綺麗だったね。」
……誰?
送り主のアカウントを見ても、写真も投稿もない。
友達でもない。知らない人。美穂は即座にブロックした。
だが――
次の日もまた、同じアカウントから別のメッセージが来た。
「今日はいつもより早く帰ったんだね。」
ゾッとした。
ブロックしたはずなのに、なぜ?
アカウント名が微妙に変わっている。どうやら同一人物が新しいアカウントを作って送ってきているらしい。
その日から、美穂の“普通の生活”は崩れ始めた。
夜道で、誰かの足音が背後に聞こえる。
窓の外に、人影が一瞬映る。
玄関のポストには、手書きで「見てるよ」とだけ書かれたメモ。
恐怖に耐えかね、美穂はついに警察に相談した。
が、決定的な証拠がない以上、「気のせいでは?」と流されてしまう。
それでも、美穂は何とか日常を取り戻そうと努力した。
スマホも変えた。カーテンも遮光性の強いものにした。
引っ越しも検討していた――
そんな時だった。
深夜2時。
眠りかけていた美穂の耳に、スマホの通知音が響いた。
恐る恐る画面を見ると、また、あの人物からのメッセージだった。
「なんで部屋を真っ暗にしたの? でも安心して。
カーテンの隙間から、ちゃんと見えてるよ。」
反射的に悲鳴をあげ、美穂はカーテンを開け放った。
……でも、そこには誰もいなかった。
その後、美穂は精神的に不安定になり、会社も辞め、実家に戻った。
SNSもやめ、スマホも古いガラケーにした。
数か月が経ち、ようやく心も落ち着きはじめた頃――
美穂の実家に、一通の無記名の封筒が届いた。
中には、一枚のポラロイド写真。
写っていたのは、美穂の寝顔だった。
撮られた場所は、実家の自分の部屋。
枕元には、彼女のガラケーが光っている――着信があったようだ。
封筒の裏には、こう書かれていた。
「どこにいても、見てるよ。」
怖い話 @Densama114
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