王の執務室と、ナギの部屋

城へ帰ったリーゼは王に報告に向かった。

執務室のドアをノックすると

「誰だ」

「リーゼです。ご報告に参りました」

「入りなさい」

「失礼します」リーゼは部屋に入ると用意されていた椅子に座った。


「ナギと話をしてきました。教育の基本は、『読む、書く、計算する』だそうです。能力者同士で伝達していたことを、文字として書き留め本を作って、読める人を増やせば知識が広がると言っていました」

「なるほど、そうやって知識を持つものを増やして国を治めているのか。文字と言う物を作らないといけないのだな、それと文字を何に書き留めるかということになる」

「ナギの国も昔は文字が無かったそうで、他の国から文字を輸入したそうです。それでナギの国の文字を使えないか考えてもらっています。書き残す方はこの国にあるもので何が使えるか、ですね」

「そうか、重鎮たちを集めて、この事を考えることにしよう。それかナギに城に来てもらって、重鎮たちに話をしてもらう方がいいか」

「そうですね、まだどうすればいいか手探りですから、まずは重鎮の方々とお話しされてください。それをナギに報告しますわ。ナギから話を聞きたいということになれば城に来てもらわないといけないでしょうから」

「そうだな、ご苦労だった。動きがあれば報告する」

「解りました。それでは失礼します」リーゼはそう言うと執務室を出て自分の部屋へと戻った。





ナギはロフトの椅子に座って外を見ながら考えこんでいた。

『どうしました、何を考えていらっしゃるのですか?』

「ああ、サクラ。私の国の文字が使えるかどうか考えていたの。それにしてもどうして転移者なのに、すぐ言葉が話せたのかしら?」

『それは転移した日にナギがこの国の言葉が解るように心を開いたからよ』

「そうなの、異国に来たのに言葉が解るって不思議だと思っていたの」

『私達があなたの国の動物の姿を借りたのもあなたの不安を少しでも和らげるためだったの』

「ありがとう。それにしても言葉を文字として書き留めるってなかなか大変なのね。私の国はいろいろと使っているけど、他の国は一つだけというところもあるし、何が使えるかな?」

ナギはそう言うと机に指で書いてみた。耳から聞こえる音を書き表すこと。今起こっていることを書くこと。

『ちょっと失礼しますね』サクラがナギの額に手を当てた。暫くして。

『おそらくカタカナが使えそうですね』

「サクラ、私の国の文字が解るの?」

『額に手を当てて文字を読み取りましたからね。強い能力者だと真名を知る相手の知識を読み取ることが可能です。ナギは転移者なので会うだけでは読み取れませんからご安心ください。平仮名は曲線ですし、直線のカタカナがいいと思います』

「この国の方法だと知識を広げることも残すことも難しいわね。文字が必要になるのも解るわ。カタカナの表を書いてみてそれで文章が作れればいいのね。ランドセルにノートも筆記具も入っているはずだから、リーゼ様に持って来てもらって書いて見せてみようかしら」

『それはいいですね、それはそうとナギ、もう遅い時間です。お疲れでしょうしお休みになってください』

「そうね、また明日考えましょう」私はそう言うと階段を降りベットに横になった。

「おやすみなさい」

『おやすみなさい』私はすぐ深い眠りについた。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る