怖い話

@Densama114

返して

夜10時すぎ、バイト帰りの女子大生・ユカリは、駅のトイレでスマホを拾った。


画面は割れていたが、起動する。ロックはかかっていない。

「落とし物だろうし、交番に持っていこう」

そう思って電源を切ろうとしたとき、通知が届いた。


【Unknown】

かえして。


直後、カメラが勝手に起動した。

画面に映ったのは、**トイレのドアの向こうに立つ“人影”**だった。


怖くなってスマホをトイレに置いて飛び出した。

が、なぜか手には、まだそのスマホが握られていた。



帰宅後。家に入ると、自分のスマホが鳴った。


非通知着信。

画面には“何も映っていない”のに、スピーカーから音が聞こえた。


「どこ……どこなの……」

女の、かすれたような声。


通話を切っても、また鳴る。

再起動しても、電源を切っても、鳴る。


ベッドの下からも、同じ声が聞こえた。


「かえして……ここに、いるんだよ……」



翌日、学校で友達にその話をすると友達はこんなことを言った。


「そのスマホ……ここ一週間で、3人が拾って、全員いなくなってるって噂の…最後の持ち主は、高校生の女の子で、トイレの鏡に全身が貼り付いたような状態で発見されたって」


手にしたスマホを見た。画面が勝手に点いた。


カメラが映していたのは、今いる学校の教室の中。

——そしてその後ろ、自分の首元に、女の手が伸びている。


その瞬間、カメラの映像が切り替わった。

床にうつ伏せで倒れている、自分。


画面に文字が浮かぶ。


「つぎは、あなた」


現在もそのスマホは、どこかに落ちている。

拾ってしまった人は、みんな“かえす前に”消える。


それでも、きっとどこかで誰かがまた拾うだろう。

それは、もしかすると——


あなたかもしれない。

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