第45話 墓に巣食うリンダヴルム 終編
竜は墓地の入口の方で竜相手に逃げ回っているティッタを臭いで追いかけていたため背中ががら空きだった。竜の後ろについたヴァルターはその気を逃さず竜の後ろ右足の付け根目がけて勢いよく剣をふるった。剣の刃先は弱ったとはいえ竜の鱗をものともせず分厚い竜の肉にすら食い込んだ。いけると確信したヴァルターはそのまま剣を分厚い肉の下へと行くように力をいれ遂に竜の右足を切った。竜は痛みに耐え切れず大きな唸り声を上げた。しかしほぼ無傷だった前の両足でティッタ目がけて執念深く彼女に近づく。
「ヴァルター、バチ当たりじゃがこの際近くの石棺にこいつを頭から突っ込ませる!やつの頭が動けぬ間に・・・」
「今更だろ!分かった、ぶった切ってやる!」
ヴァルターの了解を得てティッタは近くの石棺へと近づいてリンドヴルムを挑発して誘導させた。近づいたリンドヴルムがその大きな口を開けて素早く首をティッタ目がけて突っ込ませると、ティッタは右にジャンプしてその突撃をかわす事ができた。勢い良く石棺に突っ込んだリンドヴルムの頭は棺を貫通していた。棺の中へと貫通した竜の頭はがれきの様に崩れ落ちた石棺のかけらの重さによって固定され頭を石棺の中から出せずにいた。
「今じゃ、ヴァルター!竜の首を切れ!」
リンドヴルムの首にまで近づいたヴァルターは声を大きく上げ、力いっぱいに剣を振りかざすとエルフ鋼で出来たその刃先は竜の首を覆う硬い鱗を貫き肉まで突き刺さるが切り落とす事が出来なかった。竜は必死にもがきヴァルターも剣の柄から手を離すまいと必死に握る
「ヴァルター、剣に魔力を魔法円の様に流しこめ!風でも火でも良い!」
ティッタから言われたヴァルターは風を想定した魔力を剣を掴んでいる右手に集中させると柄を通して魔剣が自身の魔力を吸収している様な感じがした。すると魔剣の刃先から強い風が起こる。その風がさらに竜の肉を切るが食い込むには至らない。
ふとヴァルターは考えた。剣の両方の刃から風が出るなら進めたい方向に魔力を調整できないかと。
ヴァルターは魔剣に再び魔力を込める。今度は竜の肉に食い込んだ前の方の刃には風を最小限に、そして後ろの刃には魔力を最大限に込めた。リンドヴルムの肉に食い込んだ剣が下へと瞬時に降ろされ竜の首を綺麗に切断した。首を失ったリンドヴルムの胴体は痙攣を起こしながらズシリと床へと落ちていった。リンドヴルムの頭と胴体の切断箇所からは血が滝の様にあふれ出てきた。ヴァルターはついにリンドブルムを倒したのだ。
先ほどまで必死に戦っていたヴァルターとティッタは荒く息をしながら、一安心していた。
「ふぅふぅ・・・。わしは1000年近くは生きとるが竜をこんな荒々しい形で退治したのはヴァルデマールの奴とお前しかおらんぞ?」
「はぁはぁ・・・。誉め言葉と受け取っておくよ、ティッタのばあちゃん。」
リンドブルムとの戦いがようやく終わり、ヴァルターは辺りを見回す。墓地に巣くっていたリンドブルムがこれまで好き放題していたのと、そのリンドブルムを見つけてヴァルター達がすぐに戦闘を起こして派手な魔法や石棺を利用した即席の罠を使った為、壊されて遺骸の見えた石棺、崩された墓標、壊された壁など墓地は荒れ放題だった。
「他の魔物が食いに来ない為にもとりあえず竜の死体だけはこの墓地からとっとと動かすか。ティッタ、せめて墓地の入口まで風の魔法でこいつを運べるか?」
「こんなに重いのは初めてじゃがまぁやって見るか。流石に頭はおぬしが持てよ?」
そう言って風の魔法でリンドブルムの死体を包む魔法を唱えていたティッタを苦笑いしつつヴァルターは壊された石棺のがれきを取り除いてリンドブルムの頭を取り出した。この広い墓地に住みつくだけあって頭は大きく重かった。ティッタよりも魔法の使えないヴァルターはとりあえず地道に両手で持って入口まで運ぶしかなかった。
甲鉄のヴァルター 成り上がり騎士の冒険譚 生値命 @ikineinochi42101
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。甲鉄のヴァルター 成り上がり騎士の冒険譚の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます