第24話 帰還後の話

執事長クルトからの折檻を終えた後、ヴァルター達は謁見の間で娘のレギンリンダと共に座っていた大公ルートヴィヒに事のあらましを説明した。命令も受けずに勝手に敵の要塞に忍び込んだ事、旗騎士のヴォルフラムを助けようとしたが捕まった事、ヴォルフラムが自分たちの釈放を条件に魔族達の生贄になった事。謁見の間の左奥にはボイマルケンの全軍を指揮するテオデマー将軍が立ちながら厳しい目つきで4人を見ていた。テオデマー将軍の右で小さな椅子に座りながらレギンリンダがヴァルターからの説明を受けて言葉も出ない程おののく中、レギンリンダの隣で謁見の間の奥の中央の椅子に腰をかけながら報告を受けたルートヴィヒは溜息をついた。


「ヴォルフラムを失った事は惜しい。あやつはこの軍の中でも勇猛な騎士だった。それがあの蛮族どもの生贄になるとは・・・アスガルドの神々も酷な運命を用意なさったものだ。」


「おっしゃる通りです。旗騎士ヴォルフラムが殿で奮戦したから我らは大敗してもこれだけの兵力を温存できました。大公様、戦力の再編は一週間程度で出来ましょう。」


ルートヴィヒがヴォルフラムの功績を称えたがヘルムートの父、テオデマー将軍が賛意しながらも暗に直接軍の指揮をして大敗を招いたルートヴィヒを批判しているようにも聞こえており、ルートヴィヒの前で跪いていたヴァルターら4人の従騎士達はヘルムートの父が刑罰を受けるのではないかと冷や汗をかいていた。特にヘルムートは緊張した顔つきで自身の父親を見つめていた。しかしテオデマー将軍は落ち着いた顔つきをルートヴィヒに見せていた。

ルートヴィヒはやや不快そうな顔をしながらもすぐに手元のテーブルにあった銀のコップを手に取り白ワインを飲んだ。酒を飲み干すとルートヴィヒは目の前で跪いていたヴァルター達4人の従騎士達を睥睨していた。悩んでいるのかルートヴィヒは金で出来た古風なヘッドバンドを触りつつヴァルター達に語り掛けた。


「まずは捕えられた父を助けようとするその姿勢は見事であると言いたい・・・だが。」


次にルートヴィヒが言おうとしている言葉をヴァルターはすぐに予想できた。


「お前達は使えている騎士達の正式な許可も得ず城内で各々に与えられた持ち場を離れて勝手に危険な敵地に忍び込んだ。明らかな軍規違反だ。おまけに4人のうち、ヴァルターは私の娘をそそのかして城門の落とし格子を門番に開けさせるようそそのかした様だな?」


「お父様!それに関しては私もヴォルフラム様をお助けしようとするヴァルター様のご意思に賛意したのです!ヴァルター様だけの責任ではありません、罰するなら私めも!」


レギンリンダが椅子から立ち上がって父に抗議したが見下ろしていた父に睨まれる。


「リンダよ、私はお前とではなくボイマルケン軍を率いる者として従騎士のこやつらと話しておるのだ。少し黙っておれ。」


ルートヴィヒにそう言われたレギンリンダは抗議したかったがこれ以上は声が出ず、悔しそうに椅子に座り直す。ルートヴィヒは目の前の4人の方へと見直した。


「此度の件だが軍司令官でもあるテオデマーとも検討した結果の処分をお前達に与える。」


ヴァルター達4人の従騎士達は来るべき罰に身構えた。

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