DAY5 三日月

 月は世界でただひとつなんだからtheが付くのは自明だと言ったら、彼女は「偽物の月があるかもしれないじゃない」と反論した。「偽物があろうが、本物の月はただひとつと決まっているんだ」と言うと、彼女はふてくされた。「だってあたしの月は本物だもん」と一枚の写真を見せてくれた。なんとも陳腐で安っぽい、紙で出来た三日月と幼い彼女。「小さい頃の写真? かわいいね」と褒めると「ね? あたし月と写真を撮ったのよ」と彼女は笑った。ああ、彼女は世界にひとりきりなんだなあと僕は彼女を抱きしめた。

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