第7話 神仏のご加護

「....!」

「...み!」

七海ななみ!!」


 お父さんが私を呼ぶ声で目が覚めた。

 目の前にはお父さんとお母さん、そしてなぜか救助隊員の人がいた。

 ここは...砂浜?なんでこんなところに私は寝転がってるの?


「よかった、七海が起きた...」

 お母さんは海で冷たくなった私を抱きしめると、声を上げる。


「どうしたの?お母さん、お父さん。私何かあったの??」 

 私は起き上がって聞いてみる。

「どうしたって...お前、海の真ん中で暴れてたんだぞ」


 海の真ん中で溺れてた–––––。


 お父さんの話を聞いた瞬間、最悪の記憶が蘇る。それは海の妖怪、『トモカヅキ』が私の命を奪おうとしたことだ。

 でもなんでトモカヅキは私を殺さなかったんだろう?そう思い、

 私は思い、空を見上げるとさっきまでの曇った天気が嘘のようにそこには快晴が広がっていた。

 

 きっと空にいる神様が私を救ってくれたんだ。

  

 そう確信すると、私は立ち上がって空に向かって叫ぶ。


「神様、ありがとうございます!!!」

 

 お父さんとお母さんは私を不思議そうに見つめると、二人揃って笑い始める。


「そうね、きっと神様のおかげだわ」


 トモカヅキのことはこれからも神様と私だけの秘密にしておこうと心に刻んだ。そして獲物を逃したトモカヅキも私を忘れることはないだろう。


––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––


 そんな8歳の頃の記憶がフラッシュバックする。周りにいる友達は泣き喚いたり悲鳴をあげたりする子が多かったが、私は一人だけ堂々としていた。

 勿論鼓動が速まって心臓が口から出そうな勢いだが、それでも私は泣きも、崩れ落ちもしないで立っていた。

 だってそれは私が神様に感謝するきっかけになった出来事であり、とっても怖くて、とっても嬉しかったことだから。



 その様子を忍はじっと見つめていた–––––。

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