可愛い看護師の彼氏になったら、彼女がめちゃ甘えてくるようになった

和泉柚希

第1話 近所の新人ナース

 俺が持病で通っている家の近くの病院。俺、西森颯太(にしもり そうた)は小学生の頃から、腎臓の病気で近くにあるそこに通っていた。


「西森さん」


「はい」


 名前を呼ばれた。若い看護師さんだ。27.8歳くらいかな。多分俺と同じ年くらい。


 紺色のカーディガンを着こなしている白い肌の天使。相変わらず看護師という職業は若い人は、可愛い人も多いなあと感心する。


 血液検査をして数値を見るだけなのだけど、幼い頃から半年に一回のこの検査が欠かせないし、入退院も人生で6回くらい繰り返してる。


 我ながら病弱だったなあと思う。けれど大人になってからは、病状も落ち着き、検査するだけで済むようになった。


「うん。数値も落ち着いてるし、問題ないようだね。じゃあ、また、3ヶ月後に予約を取っておくね」


「はい、ありがとうございます」


 毎回のことだが、サラッと診察が終わった。現在の主治医は、新田健太郎(にった けんたろう)医師。まだ30代で若くて丁寧な医師だ。


 俺が小さい頃の取材はおじいさん先生だった気がする……と自分の記憶を辿る。


 診察が終わり、診察室を出ると、看護師さんが毎回今回の検査結果などが書いてある書類が入ったファイルを俺に手渡してくれる。


 その筈なのだが、今日は随分遅い。診察が終わって15分経ったのにまだ来ない。俺はおかしいと思い、受付に行って聞いてみようと思った。


 すると、立ち上がると同時に女の人に呼び止められた。


「すみませんっ、西森さん」


「はい」


 振り向くと、さっきの紺色のカーディガンを着た肌の白い看護師さんだった。もしかして、新人さんで忘れてしまっていたのだろうか。


「申し訳ありませんでしたっ。新人で」


 ペコリと頭を下げるその看護師さん。俺は、小さい頃から入退院の連続だったので、実は看護師さんのミスはたくさん見てきていた。そのため寛容だった。


「大丈夫ですよ。それくらい」


 俺はにこりと笑って微笑み返した。


「はぁ。良かったぁ」


 緊迫して青ざめていた表情がどんどん柔らかく変わっていく。看護師さんは常に朗らかな表情をしているなくちゃなあ。


 俺は、その看護師さんの保護者になったような気持ちになった。すると、その看護師さんの気が緩んだのか、少し世間話をし始めた。


「実は、ついさっき。別なことでおじいさんに怒られてしまって。待ち時間が長いって」


 うーん。それを新人看護師に行ったところで何も変わらないんじゃないかな。完全に八つ当たりされているだけだ。


 でも、そんなことよりもこの看護師さんがほっと安心してくれて、俺に気休めにでも話してくれたことの方が嬉しいよ。


 保護者のような温かい目で彼女のことを見るな、と自分に言い聞かせる。保護者じゃないんだからと自分で呆れてしまう。


「西森さんは、病院に慣れていらっしゃって、温厚な感じで安心します」


「いやいや。じゃあ、頑張ってね」


 ふとネームプレートを見ると、酒井(さかい)と書いてあった。研修中の文字もある。新人看護師さんは大変だなぁ。俺は、そう思い、会計を済ませて家に帰った。



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