第7話 まん丸ボールで歩けない

「ちゅんちゅん、ちゅんちゅん、ふいぃぃぃ、おなかいっぱい」


 果物、ちょっと食べすぎちゃったかなぁ。僕はそのままお腹を出して、イスの上に寝っ転がります。


「ルーパート、はしたないですよ。しっかり座りなさい……。はぁ、それじゃあ無理かしらね」


 うん、ママ。ちょっと今は無理みたい。起きあがろうとしたけど、起き上がれないし。何で僕、起き上がれないんだろう? そう思いながら、そのあと2回起きあがろうとしたんだけどダメでした。


 と、ササッとフレデリアが僕の横に鏡を置いてくれたよ。


「ママ!! ぼーりゅ!! きいりょのぼーりゅ!!」


「そうね、ボールね。出された果物全部食べれば、そうなるわよね。でもどう考えても果物の量が、ルーパートのお腹よりも多いのに、どうやって全部食べたのかしら?」


 僕は今日、丸っこい小さな、黄色い小鳥さんに変身しちゃったでしょう? でも今は、もっと丸っこくなって、ボールみたいになってたんだ。


 僕は鏡を見たまま立とうとします。足を伸ばせるだけ伸ばして、勢いをつけてフンッ!! ああ~、残念。途中までは起き上がれるんだけど、足が地面に付く前に、コロンッてまた転がっちゃいました。丸っこ過ぎて、立てなかったんだよ。座れないし。


 ママが僕のことを立たせてくれます。でも、う~ん、座りにくい、それにちょっと歩いてみたけど、なんか足がヨロヨロ。


 あっ、あのね僕、飛べる魔獣さんに変身しても、ちょっとしか飛べないんだ。うんと、ちょっとのジャンプと、ママの膝の高さから、ゆっくり降られるくらい。パパとお兄ちゃん達は、変身した魔獣さんにみたいに、普通に飛べるよ。飛ぶのも練習なんだって。


「普通の姿でも、階段とか場所によっては、まだまだ歩くのが危ないっていうのに。余計危なくなってしまったわね」


「旦那様。そろそろお時間です」


「ああ」


 大変!? パパがお仕事に行く時間みたい!! 僕は一生懸命パパの所に歩いて行きます。今日パパとレオンハルトお兄ちゃんは、僕達が住んでいる街の様子を見に行くんだって。今、新しく作っている物があって、それのチェックをしに行くみたい。


 あとは、街を囲んでいる大きな壁があるんだけど。その壁は街の中に、悪い人達が入ってこないように、怖い魔獣さん達が入ってこないようにしている壁で。その壁が壊れていないか、直すところはないか。それも調べに行くみたい。


 パパ達がどこかにお仕事に行く時は、僕はいつも玄関で行ってらっしゃいをするの。だけどこんなにヨロヨロ歩いてたら、行ってらっしゃいを言う前に、パパ達がお仕事に行っちゃうよ!!


「パパ、いってらっしゃいしゅる」


「では一緒に玄関まで行こう」


「ならば私がルーパートを玄関までは連れて行きます」


「いや、今度こそ俺だ!!」


 そう言って、エリオットお兄ちゃんが僕を掬い上げたよ。ん? レオンハルトお兄ちゃん、どうしたの? 勢いよくエリオットお兄ちゃんの所に歩いてきたけど? ドアは向こうだよ?


「何だよ、兄さんは今日、もうルーパートをポケットに入れて、少し歩いただろう?」


「あれは歩いたうちには入らない」


「いいや、入るね。だから次は俺だよ」


「はぁ、あなた達、本当にいい加減にしなさい。玄関まではエイオットよ」


「へっ」


「チッ」


「やめなさい! ルーパートがマネをしたらどうするの!」

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