リゾートホテルちちぷいの大浴場は半端ない

 大浴場に到着した私達。すると、つぐは、感動の歓声をあげた。


「うっひょぉ~~~~~♪ なにこれ♪ この! 大解放感かぁぁん♡」


「お、お姉様……お、お声が大きいですわよ」


 妹の椿つばが、思わず突っ込む。ふふ♪ 本当に仲良し姉妹だわ♪


 私達は目の前のお風呂の景観に圧倒されて、目がパチパチになってた。

 各客にも、専用フロアは準備されているようだけれど……

 福岡国ふくおかこくの貸し切りフロアにある露天大浴場って……とにかく、広っ!!


 大きな湯舟には、四角く切り出された、見たこともない綺麗な石が敷き詰められていて、その広さときたら、百人くらいは入れるのでは?

 ……それだけ広い。アハハ♪ 泳げそう♪


「ミント? 泳いではいけませんわよ? でも……貸し切りですし……よろしいのでしょうか?」


 う! 椿咲に読まれた……流石ね♪ でも、こう広いとウキウキしちゃうわ♪


 大きい湯船の他にも、バラの花びらで埋め尽くされたバラの湯……

 薬草が入っている網袋が浸けられた薬湯……

 それから……ワイン風呂? え!? ワイン風呂もあるのね♪


 子供の頃入ったことあるから、懐かしいわ♪


「ワイン風呂……懐かしい♪ ん~♪ いい香り。きちんとアルコールは飛ばしてるから、私たち未成年でも大丈夫そうね♪」


 すると、月美が興味をもったのか、私に近づいて聞いてきた。


「ワイン? なにそれ? 西の大陸の産物なの? 福岡国では見たことないわねぇ……どんなものなの?」


 確かに、福岡国で、見たことも聞いたこともないわね。ブドウは。


※彼女たちはの為、の事は知らない


 月美はワインに興味があるようだけど♪ 他にもいろんなお風呂があって、すごすぎるわ。


 泥風呂……砂風呂……へ? なにそれ? お湯じゃないのにお風呂? おもしろい♪


 さらには、サウナまでついてて、その横には綺麗な水風呂まで……全部踏破したいわね♪


「い、至れり尽くせりなお風呂ばかりですね……どれに入るか迷いますねぇ~?」


 幻刃まほろばが嬉しそうに迷ってる。それもそうね♪


「バラの湯なんていかがです? まほ♪ とりあえず浴び湯をしてから入りましょ♪」


 珍しがる幻刃に、椿咲が率先してバラの湯に向かっていく。


「ウチも♪ バラ湯行く~♪」


 あおいも加わり、仲良し三人組はバラの湯へ♪ 私はどこに入ろうかな? やっぱり、ワイン風呂かしら♪


「ねぇ? ミント。ワインについて詳しく知りたいわ。ワイン風呂、行こっ♪」


「ええ♪ いいわよ、月美♪」


 先ほどからワインに興味持った月美とワイン風呂へ♪ 詳しくかぁ、説明できるかな?


 すると、葵から、とんでもない発言が。


「あれ? にぃには? 女子5人で入るっち話やけど来んと?」


 葵の問いかけに、私たち4人は「え!?」って、表情が固まる。

 さも自然に、彼とお風呂に入るって言ってる……葵? 純朴なのだろうけれど……


「……葵、流石に初日からはね?」


「ええ……飛ばしすぎでは? それに葵? ラーヴィ様はなのですからね? 大胆すぎますわよ?」


 月美と椿咲に注意される葵。


「ん~、皆と一緒に入れたらなぁ~って思ったんやけど……そっか……確かに、初日からにぃに……干からびちゃうね♪」


 ねぇ、葵……それ、完全に夢魔サキュバスのセリフよ?

 ……天然って怖いわぁ~。でも、私も彼と一緒にお風呂はしたい……


 は! わ、私も? ふ、ふしだらかしら?


 すると、幻刃が葵の手を取って……


「葵も、大胆なとこあるよね? 無自覚に♪ いきなり初日から彼が、私たちにつかまったら、大変でしょ?」


「ウチもそれに入ってるん? ……そうなんかな?」


 葵もだけれど……


 幻刃が誰よりも激しいと思うの。普段とのギャップもあるけれど……

 彼女の本性は、ヤバイ。負けてられない!(何?)


 とりあえず、一旦落ち着かなきゃいけないわね。

 バカンスが台無しになっちゃうもの。


「皆、今日は抜け駆け無しでお願いするわよ?」


「そ、アイツもアタシたちも、今日はゆっくりくつろぎましょ♪」


 年上の月美が助け舟を出してくれる。皆一先ず落ち着いてくれたわ。


 私と同い年の葵、椿咲、幻刃の三人だけれど、正直侮れない。


 彼を求めるのに、すごく貪欲なのよね……私、これでもセーブしてるんだけど?


「ま、とりあえずアタシ達も入ろ♪ ミント♪」 


「そうね♪」


 と、私は返事をして、月美と一緒にワイン風呂に向かった。


* * * *


「んが~~~~♪ きんもちいいし、なんやろ? このワイン風呂、すごい香りがええわね~♪」


「でしょ~♪ すっごく久しぶりだわ♪ 子供の頃以来かしら♪」


 魔王女様という肩書をポイ捨てした、オープンな月美は豪快ね♪


 お湯は少しぬるめの加減。さっきも確認したけれど、しっかりアルコールは飛ばしてあるし……うん♪ 問題なし♪

 でも、源泉かけ流しのワイン風呂なんて、きっとここだけでしょう? ファンタジーすぎるわね……


「ほぇ~、小さい頃に? そいや、西の大陸のさらに遥か西の島国って言ってたっけ? ミントたちの故郷って」


「ええ、原料のブドウの産地ってわけじゃないんだけれど、うちの集落ではね、マリーお祖母ちゃんが、小さな畑で育てたブドウを、毎年ワインにしていたのよ♪」


「ブドウが原料なんやね♪ 福岡でも育てられるかしら? 美味しいの?」


「美味しいわよ♪ 寒い季節には、ホットワインにしてくれて♪ よく飲ませてもらったの。懐かしいわ♪」


 ワインを作るのは難しくて、失敗もあったらしいけど、「もったいないからね?」って、マリーお祖母ちゃんが処分する代わりにお風呂に混ぜて、ご機嫌で入ってたのを思い出すわ♪


「へぇ~♪ すてきやね♪ ……ところで、この赤い色って、ワインがそういう色なん?」


「ええ♪ 赤ブドウを使った赤ワインのお風呂なの♪ 赤ワインにはポリフェノールとタンニンがたっぷり含まれてるから、お肌のアンチエイジングにも効果抜群なのよ♪」


「これ以上若くなっちゃう? ほほ~! それならお顔にもたっぷり~♪」


 パシャパシャっと、顔にワイン湯をかける月美。ふふ♪ 無邪気で可愛いなぁ~♪


 それにしても……ここは本当に素敵な場所。


 外からは見えないように、遮蔽物はしっかり設けられてるのに、こちらからは景色が一望できるって構造……安心感も開放感も両立してる。


 お風呂に浸かりながら、月美からブドウとワインについて色々聞かれたから、私の知る限りのことを伝える。

 月美は興味津々に、頷き、未来の話をしてくれた。


「いつかブドウ園を福岡にも復活させたいわね♪ きっと超古代には、福岡でも栽培していたでしょうし♪」


「素敵な計画ね♪ その時私も手伝うわよ♪」


「アリアリ♪ んで、ワインの醸造する施設も作るわ♪」


 にっこり笑顔を交わす。そうね、大人になったら、彼女と乾杯を交わしたいわ♪


 すると、バラの風呂に入っている三人の方から、声が上がる。


「うあ~~~~! めっちゃ綺麗~♪ まほ~、ヤマネアイで水平線見て~!」


「! なんて美しいサンセットなのかしら!」


 あらあら? 気になった私と月美も立ち上がって、声のする方を見てみると……


☆ ☆ ☆ ☆ 

   〇

~~~~~~~~~~~~


 なんて素敵な光景……!?


 空は蒼穹色と美しいオレンジ色がグラデーション状に染まり、どこまでも続く水平線に、ちょうど太陽が沈みかけているところだった。


 この場に吹く優しい夜風は、福岡にいたときよりもずっと爽やかで、とても心地いい……


 見やすい場所に、私たちは自然と集まった。美しい夕焼け。


 きっと、空気が澄んでるんだわね。ほんとに、言葉がいらないほど美しい……


 幻想的な世界……ほぅ……と、心がこの美しさに溶け込むようだわ……


「……」


 言葉は不要。心の中では、みんなきっと、同じことを考えているはず……


(((((彼と、この夕日を見たかったなぁ~)))))


 ──って、思ってるでしょ? ふふ♪


 


 すると……


 ぐぎゅる~~~~~~~~ぽふん♪


 と、盛大なおなかの音が鳴り響いた……


「「「「……幻刃?」」」」


 4人の視線を浴びて、バラの花びらを体にまとった幻刃が、真っ赤な顔で視線をそらしてる。あらら? 可愛いわねぇ♪


 ま、私もお腹すいたし♪


「それじゃ、そろそろ上がって、ご飯にしましょうか♪」


 みんなで頷いて、私たちはお風呂を後にした。

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