第16話 (公式)→(くどぅー)


「あーあー、いいねが200万まで来ちゃった。フォロワーも工藤くどうくんを抜いたし。別に狙ってたワケじゃないんだけどなー」


 と言いつつ、デスクに両足を乗っけてゲーミングチェアに座る佐藤さとうさん。

 その表情は、明らかに俺を煽っていた。


(ぐぬぬ……)


 ま、まあいい……。


 別に俺はフォロワーが欲しくて呟いてるワケじゃないし。

 承認欲求があってやってるワケじゃないし。


 全然悔しくなんてないし。

 隣の芝生なんて眩しくないし(震え声)。


(……冷静に冷静に……。俺はこれまで通りに行くんだ……)


 もう佐藤さとうさんには及ばないけど……。


 俺には支持してくれる十万人のフォロワーさんたちが居るから、それで充分――


《【くどぅー】 フォロー0人 フォロワー2人》


 あ、あれえええええええええええええええええ?

 俺の約十万人の軍勢は何処に?


「ねえねえ工藤くどうくん、なんかマーちゃん(※佐藤さとうさんは自分のことマーちゃんって呼ぶよ!)のアカウントがパワーアップしてるよ」


「……え?」


「そっちで確認してみなよ」


 俺は佐藤さとう探偵事務所のアカウントを確認。


《【佐藤さとう探偵事務所(くどぅー)】フォロー2000人 フォロワー50万人》


 何でだよ。何で俺が吸収されてんだよ。

(くどぅー)ってそういうことだよね?


 佐藤さとう探偵事務所に所属したから?

 え、ツブヤイチャーってそういうシステムだっけ?


「ちょっとぉ! どうなってんのこれええ! しかも俺のアカウント消えたんだけど! ログインできないんだけど!」


「まあ良いじゃん工藤くどうくん。今後はマーちゃんのアカウントで呟きなって。パスワード教えてあげるから」


「そういう問題じゃないんですけど……」


「アカウント引っ越ししたって感覚でやれば良いじゃん。収益化もしてないから」


「はあ……」


 俺は渋々、佐藤さとう探偵事務所のアカウントでログインした。

 ……ん? さっきの佐藤さとうさんの呟きに新しいコメントが来たぞ。


河童(幽体)『カッパッパ! ボクは砂糖が甘いことなんて知ってたッパ! でも幽体は殴打しても無駄なのは初知り情報ッパ』


 何でテメーが来てんだ。

 黙って角砂糖舐めながら地獄探訪でもしてろ。


西の中卒探偵『もろたで工藤くどう! 砂糖が甘いことなんて知っとったわ! この勝負はアタシの勝ちやで!』


 オマエもどさくさに紛れて来てんじゃねーよ。

 甘いことくらい俺も知ってたし。


 てか完全に俺が呟いたことになってんじゃん。

 見たことあるフォロワーさんからのコメントも来てるし。

 フォロワーさんまで吸収された?

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