『マガンとアクリール』

やましん(テンパー)

『マガンとアクリール』


 深夜の職場に、謎の人物が訪ねてきていた。


 彼は、『マガンとアクリール』の存在をさがしているという。


 一応、名高い広域探偵事務所であり、リーゾナブルをうたっているし、ぼくは今夜は遅番で、深夜11時までの営業であった。もう、11時に近い。


 『あの、それは、人の名前ですよね。トリさんとかではなく。』


 『それは、おそらくは、職種です。』


 『は? なら、地球クローワークとかに行ったほうがいいですよ。ただですし、情報量は膨大です。』


 となりから、アシスタントさんが端末を見てくれた。


 『でも、みあたらないです。』


 『はい。クローワークでもスローワークでも、見当たりませんでしたから。』


 『ふうん。その職種、どんなしごとですか?』


 『宇宙劇団にあるという、なぞの職種なのれする。でも、技術は要らない。要るのは、此の世から消える覚悟とか。どうしても見あたらないし、宇宙劇団に訊いても笑われただけでし。ぼくは、もう、疲れまして、でも、働かないと逮捕されますし。』


 『はあ。判りますよ。どこから得た情報ですか?』


 『宇宙劇団のOBさんです。世界最高の黒子スターと言われた方レス。誰もお顔は知りません。ぼくもお顔は見ていない。屋敷の障子越しでしたから。』


 『ほう。大名みたいですな。』


 『でも、そいつは、黒子職でもなく、ある謎の教団が支配しているというのですが、その教団が何かは、黒子スターさんも知らないとか。ただ、宇宙劇団にはよく現れるのだ。とか。』


 『ふん。いったい、何をする仕事ですか?』


 『役に立たない社員とか役者とか、そうした人を食べてしまい、しばらくはその代役を務め、適当にいなくなるのれす。』


 『なんと。‘’マンガ‘’ みたいな。』


 『はい。しかし、実在します。はい。』


 『はあ〰️〰️。』


 向こう側から、係長が合図をしてきていた。


 『わかりました。今夜は、もう営業時間を過ぎました。あす、または、あさって、調べて分かったことを御伝えします。料金は、それから請求しますから、ここにお名前連絡先を書いてください。あなたの生体認証番号は確認しました。』


 『お願いいましますだあ。』



     🙍🙍🙍🙍🙍🙍🙍🙍🙍🙍😾



 ぼくは、くたくたになった。


 異常に疲れた😣💦⤵️


 『ダイジョブか? 帰れるかあ? 最後に難しいのがきたな。ま、あしただ。うちは長引かさない。調査は最大2日だ。最高料金は一万ドリム。それで悩みを解消する。それだけ、がんばれ!』


 『はい。では。』


 ぼくは、ふらふらと帰宅にかかった。


 こんな仕事していて、いいのか?


 まだ、最終電車には間に合う。


 飛び込むか?


 街中とはいえ、ここは、かなり場末である。


 ビルの背丈は低く、繁華街はなく、いわゆるAI店員さんだけの、ネオコンビニさんが二軒ほどあるだけで、すでに12時も近くなりひっそりとしていた。


 そのぼくを、何者かが襲ってきた。


       😋

 

 ぼくは、食べられて、ほかの誰かと入れ替わったが、それは妲己さんみたいなもので、本人には分からないのである。


 新しいぼくは、マガンとアクリールの正体を知っていた。



 それでどうなるかなんて、分かるわけがありません。




🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙋



天の声A


 『まるなげではないか!』



天の声C


 『まて、あるいみ、王道のはなしであろう。』



天の声G


 『やはり、続きを書くよう要求する。』




👼👼👼👼👼👼👼👼👼👼👼👼👼👼👼👼👼👼👼👼👼




 翌日、ぼくは調査結果を報告した。


 『マガンとアクリールは、実在します。ぼくが、マガンです。もし、正規料金一万ドリムのほかに、成功報酬二万ドリム支払うなら、あなたを雇用しましょう。あなたは、宇宙劇団の影の支配者になります。愉しいよ。』

 

 いままでは、全部食べていたが、こんどは、半分ちょっとだけ食べて、人間を支配下におき、さらにそいつにも、半分だけ食べさせて、次々に、ついには、劇団全体を支配下におく。という、新しいミッションをアクリールとともに開発したのであります!


 うまくゆくかどうかは、やってみなくては判らない。


 地球人類は、あまりに薄味で、やや物足りないのだ。




😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤



天の声C


 『つまり、マガンてのは、誰なんだ?』



天の声E


 『はっきりしないとこが、よい。』



天の声J


 『わかりにくい。良識の府である参議院では、ま、持たないだろ。』




😫😫😫😫😫😫😫😫😫😫😫😫😫😫😫😫😫😫😫😫😫



 ミッションは、思ったよりもうまくいった。


 宇宙劇団は、支配下に置いた。


 それで、しばらくは、部下たちとともに、地球で楽しんでいたが、やがて、あきてしまった。教祖もつまらくなった。


 結局のところ、地球の行く末は、少数の顔の見えないリーダーが握っているのだ。


 ぼく、マガンとアクリールは、宇宙の意志の一小さな一端である。


 宇宙の意志は、地球に好意的なわけではない。


 地球の神様でもない。


 だから、全地球の発射可能な核ミサイルを発射させても、おかしくはない。


 アクリールは、このさい、やってみよう、と言うのだ。


 ぼく、マガンは、しかし、地球人類を食べすぎていた。


 ちょっと情が移ったというか、多少の罪悪感があったわけなのである。


 アクリールは、やりすぎではないだろうか。


 やりすぎは、つまり、自分勝手である。


 いかに、宇宙の意志が無慈悲ではあれ、引き際は華麗でありたかったのだ。


 で、ぼく、マガンは、アクリールを食べたのである。


 それから、宇宙の彼方に去ったのだ。


 地球は、生き残ったのである。


 

 😲😲😲😲😲😲😲😲😲😲😲😲😲😲😲😲😲😲😲



天の声M


 『くだらん。通信料をムダにした。』



天の声T


 『いや、これは、あきらかに、比喩である。』



天の声Z


 『やはり、戦争は、やめさせようよ。やりすぎだな。』





😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤😤




 『宇宙劇団作品 《魅惑の日常》』 より抜粋しました。




          おわり




 

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『マガンとアクリール』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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