第一話 それぞれの“事”の真実に辿り着く為に…。
「ちゅんちゅん……」
ちゅんちゅん、…とは、明一(めいいち)が、なかよくなっているすずめにつけて呼んでいる、名前である。
明一は、長ベンチの周りを歩いている、一匹のハトに言った。
ん? だけど…よく見ると、このちゅんちゅん……やけに大きいぞ……。まるで……ハト、みたいだよ……。
…って、オレ……今し方、起きたばかりだから、寝ぼけていたか……。
明一は、寝ぼけまなこに言った。
ある駅がある、その駅の前のペデストリアンデッキの休憩スペースに設置してある長ベンチで、明一は、少しの仮眠をとる前に思った。
ここで寝ている間に、寝込みを襲われて、殺されたら、殺されただ……。
あの事件が起きてからの状況が動いてから、このひと達が、オレが事件の真相を暴いた最初の頃のように、本気でオレの事を殺しにかかってくるのなら、あの時のように、何も、寝ている時ではなく、起きている時でもいいわけだから……起きていようが寝ていようが、やる事には、関係ないだろうからな……。
オレはある意味、この身ひとつで行動しているから…このひと達なら…間違いなく、集団で、襲ってくるから……。
とはいえ、そうは思っても、一応は、今も明一の身のまわりで、明一の事をみている、鏡未をこの世から亡き者にした組織達とは違う、ある組織の、そのひと達に、一応は、警戒もしている。
それとも、この組織のひと達について……オレは、まだ何か、この組織の事で、見落としている何かがあるんだろうか……?
オレが探偵として、この組織の悪事を暴いてきた事で、私怨によって、オレに何かをしてきていると、思っているけれど……。
実は……違ったりして……。
明一自身の、明一が今現在おかれている状況を、いつものように、入手した情報などから、冷静に分析して考え、推理しながら自分で導きだした、ひとつの結論を信じなから。
ここにきて、 今追っている事件の調査で、新たな情報を手に入れた事で、少し推理を進める事ができたから、少しだけと、仮眠をとっていた明一は、今、起きたばかりで、寝起きで腫れぼったくなった顔に違和感を覚えながらも、ぼりぼりと、首をかいた。
明一の番い(つがい)(「番い」とは、片割れの事)の、年上の鏡未(かがみ)が、殺された、未解決事件の“事”で、今日も昼夜関係なく調査をして情報収集をしていた。
鏡未とは、小学生だった明一が、高校へと飛び級をした時に、その学園で出逢った、現役の女子高生。
明一は、少しの眠気から、
(鏡未の仇をとる為には、休む事も大事だな……)
…と、少し、寝て休む事にした。
その日は、晴れていたけれど、寝る前から風が少し強くて、明一が、事件の調査にも駆使している、端末のスマートフォン、略してスマホ、に入って来たネットニュースからの情報によると、何でも、台風12号が発生していて、ここを通過するルートで接近し、今日か明日にでも、ここに上陸するかもしれない、との事だった。
どうりで今日は、風が強いと思った……。
明一は、あごをさすりながら思った。
また少し、ひげが、のびていた。
明一。ちゃんと、ひげは剃ってよ。わたしは、ひげはイヤだよ。
はぁ…、…と、明一は、心の中で、うるさいなー……、…と、 思いながらも……鏡未の言った事に対して、
「わかった」
…と、鏡未に返事をしたのだった。
それまでも明一は、ひげがはえたら、その都度、定期的にひげを剃って身だしなみを整えていたから、
言われるまでもない……。
…と、明一は、心の中で、ぼそりと言いながら、自分からも、ちゃんとしている事を、言われた事で、うるさいなー、…と、思ってしまったのだけれど……。
「まぁ、いいけど……」
明一は、その、鏡未とのやりとりを思い出して、ほほえんだ。
明一は、あの時以来、なんとか、鏡未の身に何があったのか、何も解らない今のこの状況を打開する為に、身をこにして、常に動いているけれど、鏡未との、やりとりで、基本ひげを剃る事を、優先させて、動いていた。
だから、今の明一の精神状態がどうであれ、何日もひげを剃ってないわけでは、ないけれど……。
生きる気力がなくなってしまって、精神的にも情緒不安定だった時に比べたら、今の明一の精神状態は、幾分かましだけれど、それでも、予期する事ができずに、いきなり突然に、自分の傍から番いがいなくなってしまって、慟哭がはじまり、今現在も、更なる慟哭の中にいる、ただなかで、鏡未の生きているという、そのやりとりだけが、明一にとっての、今も鏡未と一緒にいる、という、さみしさを感じなくできる、唯一の行動だった……。
鏡未の歌っている歌声だったりを、一日中、スマートフォンで流しながら、聴いたり、その鏡未と一緒に歌を歌ったりしながら……。
明一は、今の今まで、自分が横たわって寝ていた長ベンチに腰掛けて、自身のひげそりとウェットティッシュで、ひげを剃って、身だしなみを整えた。
そして明一は、寝る前に、新たに手に入れた情報と一緒に、ここを拠点にしながら、逸る気持ちを全面にだしながら、次の調査へと向かうのだった。
でも、その前に、鏡未との想い入れのある、この近くに店を構えている、タリーズコーヒーに入店してから、いつものコーヒーを片手に、一休みする……。
その、新たな情報をもとに進展した明一の推理の中に、ひとつの光が現れた。
もしかしたら、鏡未が生きている、かもしれない、と……。
だから鏡未、オレはまだ、死ぬ気はないからな。
だけど…もしも、推測が現実ではなくて、鏡未がいなかったとしたら……今回のたたかいで、死ぬ事になってしまったとしたら……その時はまた、鏡未に触れる事ができるから……鏡未と一緒にいる事が、できるから……と……。
だから、死に対してはもう、覚悟はできているから。
だから、大丈夫だ。
オレはまだ、たたかう事が、できる。
いけるところまで、進むだけだからな。
あの時誓った、
オレが必ず、鏡未の仇をとる。
…という事……。
それは何も、復讐する、という事ではない。
オレは……世界を変える……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます