スーサリアの祈り師
ラー
序詩
最初に、彼は幸せだったのだろうか、ということについて私は考える。
難解なことではなく、むしろひどくありきたりな疑問だ。
そのうえ、幸せということに明確な基準もなければ定義もないのだから、いずれにしても正確な答えなんて、得られるわけはない。
それがわかっていながら、なぜだろう、それでも私は、彼に質問してみたくなる。
君は、幸せだったのか。
もちろん彼は、答えあぐねるだろう。
苦笑しながら、素のままのやさしさを隠すこともせず。
大国のパワーバランスに翻弄される小国の難しい立ち位置、それは何も変わっていない。
大切な愛は、現実という意味において、永遠に失われた。
なのに彼は、一人で前に続く道を選んだ。
出発時間ギリギリの列車に飛び乗った。
だから、私は聞いてみたい。
それでもなお、君は、幸せと結論づけられるなにかをつかみ取ったのか。
車窓をながめる彼は
ただ、空の青さと、海の青さの、狭間にたゆたう光を
抱き続けていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます