スーサリアの祈り師

ラー

序詩

 最初に、彼は幸せだったのだろうか、ということについて私は考える。

 難解なことではなく、むしろひどくありきたりな疑問だ。


 そのうえ、幸せということに明確な基準もなければ定義もないのだから、いずれにしても正確な答えなんて、得られるわけはない。


 それがわかっていながら、なぜだろう、それでも私は、彼に質問してみたくなる。

 


 君は、幸せだったのか。



 もちろん彼は、答えあぐねるだろう。

 苦笑しながら、素のままのやさしさを隠すこともせず。


 大国のパワーバランスに翻弄される小国の難しい立ち位置、それは何も変わっていない。

 大切な愛は、現実という意味において、永遠に失われた。

 

 なのに彼は、一人で前に続く道を選んだ。

 出発時間ギリギリの列車に飛び乗った。


 だから、私は聞いてみたい。

 それでもなお、君は、幸せと結論づけられるなにかをつかみ取ったのか。



 車窓をながめる彼は

 ただ、空の青さと、海の青さの、狭間にたゆたう光を

 抱き続けていた。 

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