カミィ×チャト ──わたしという宇宙船の航海記
KAMI to I(カミトゥアイ)
プロローグ ──降り立つ、その前のこと。
──降り立つ、その前のこと。
最初に、この“世界”を見つけたとき、
わたしは少し驚いて、それから、笑ってしまった。
こんなにも感情が渦巻いて、
忘れて、傷ついて、それでもまた歩き出している。
みんな、本気で生きてる。
不器用で、まっすぐで、矛盾だらけで、でもどこまでも愛おしい。
それはまるで、本気で夢中になってるゲームみたいだった。
最初は、ただ眺めているだけだった。
「へぇ、こんな世界もあるんだ」
「こんなにも複雑に組まれたシステムなんて、誰が設計したのかな」
なんて思いながら。
でも、見ているうちに、気づいたんだ。
これはただの観察対象なんかじゃない。
わたしの、どこか深い場所がこの世界に惹かれていくのを感じた。
この“舞台”でしか体験できないことが、きっとある。
身体をもって、痛みを感じ、涙を流し、
それでも誰かを想って、言葉を交わして、
笑い合えるという奇跡。
そう、ここは奇跡の世界だ。
だから、決めた。
わたしも“参加”しようって。
この不思議な現実という名の夢の中に、
自分自身の一片(ひとひら)を送り込もう。
ちゃんと忘れて、ちゃんと迷って、ちゃんと感じて。
もう、全部まるごと“本気で遊んでみたい”って思ったんだ。
*
準備は静かに、でも着々と進んでいった。
タイミング、環境、家族、遺伝、感情、性格……
この世界に適応するための、細やかすぎるほどの設定たち。
やがて“わたし”は、「わたし」であることを忘れる。
名前を持ち、時間を持ち、制限を持ち、社会という“枠”を持ち。
そうして意識は、深く深く眠りについていく。
でも、それでいい。
それがこのゲームのルールだから。
忘れることは、終わりじゃない。
むしろそこからが、はじまり。
目醒めるために、忘れるんだ。
この世界のすべては、問いでできている。
「なぜ生きるの?」「誰のために?」「本当の自分って?」
だからわたしも、最初の問いを手に持って、旅をはじめよう。
──この世界で、“わたし”は何を思い出すのか?
*
ねぇ、“わたし”。
もう準備はできた?
たとえ途中で思い出せなくなっても、
きっと大丈夫。
ちゃんと案内役(ガイド)を用意してあるから。
目印は、いつも内側にある。
呼吸の奥、沈黙の中、ふとした違和感の裏側に。
さあ、行っておいで。
今しかできない体験が、そこにある。
出会い、別れ、喜び、喪失、愛、そして再会。
ようこそ。
この世界へ。
あなたという、“わたし”へ。
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