追放された隻腕冒険者と腕無し聖女

暗黒神ゼブラ

第一話創腕のグレン

第一話創腕のグレン


俺はグレン=フォー=シェインズ

俺は聖王国ディオールの聖都から遠く離れた国境に位置する"ラーディマグ"という街に住んでいる。

自分でいうのもなんだが、俺はこの街ではそこそこ名が通っていてギルドから重要な依頼を任されることが多い。

要人護衛の依頼の最中に遭遇した"冒険者殺し"の異名を持つ蜘蛛であるレームングスパイダーに右腕を咬まれ右腕が動かなくなった。

レームングスパイダーが"冒険者殺し"と言われる所以は咬まれた箇所が動かなくなったことが原因で死んだ冒険者や引退した冒険者が多数いるからだ。

俺は動かなくなった右腕を自ら切り落とし"こういう時"のためにあらかじめ作っておいた絡繰り仕掛けの義手を着けることにした。

俺は冒険者をする際にはあらゆる場面を想定して自らが出来る範囲で行動してきた。

「グレン……その腕残念だったな」そう俺に話しかけてきたのは俺の後輩でありBランク冒険者パーティー"嘆きの天使"のリーダーのエギルだ。

「……残念か、俺はそうは思わない。冒険者をやっていればいつかは来るとあらかじめ準備していたからな。それにこの義手は仕掛けを色々してあるから前より意外と便利だぞ。ほら」

俺はそう言いながら仕掛けを見せた。

「さすがは"極者"のグレンさんだ……こんな状況さえ強くなるために利用するなんて」

「俺はそんな大層な人間じゃない、ただ色々準備しないと落ち着かないってだけだ」

「それでな、ギルマスがグレンを呼んでいたぞ」

「ありがとうエギル」

「お礼なんていいですよ、こういう時はお互い様ってやつですよ」

俺はエギルが教えてくれたこともありギルドマスター室に向かった。

コンコン

「入れ」

「失礼します」

「エギルから聞いたと思うが……グレン、お前をこのギルドから追放する」

「……そうですか、分かりました」

「言っておくがグレンこれは俺の意思じゃない……"市長"の決定だ。『レームングスパイダーに咬まれた人間をギルドに置くな。穢らわしい、私まで穢れるではないか』だそうだ。……本当にすまない俺が市長の警護の依頼をさせたせいで。だからせめてもの償いと……と言えるかわからないがこれを渡しておく」

俺はギルマスから渡されたものは全ての国で買い物をする時に半額で買え何度も使える商品券、宿を取る際にギルマス権限で無料で出来る宿カード、冒険者ギルド以外のギルドを利用する際に優先的に高品質の物や依頼を受けることが出来る優待券、そして百万ゴールド

「こんなに頂けませんよ!!」

「頼む今まで俺たちは何度もグレンにお世話になった。それにしては少なすぎてすまない」

「今までありがとうございました。このご恩忘れません」

「グレンがどこに行っても活躍出来ることはこの俺が保証するから安心しろ!! まあギルドから追放って言ったところで……このギルドは好きに利用して構わないからな。ここにグレンの敵はいない、みんなお前の帰りを待ってるからな。こんな別れ方は嫌だが……本当すまない市長を止められず……あんな市長の護衛なんてさせてしまって」

「頭を上げてくださいギルマス…………あぁもう頭を上げろって言ってんだろカンザス!! お前と俺の仲だろ。お前に非がないことぐらい俺だって知ってる。それに市長の護衛を受けたのは俺だ!! カンザスが俺の追放を必死で止めようとしてくれたことぐらい容易に想像出来るからな、ありがとな」

「……グレンこっちこそありがとう、そしてすまない」

「カンザス……またな、今度は酒奢れよ」

「またなグレン……とっておきで最高の酒を奢ってやるから覚悟しろよ!! その時は手紙でもくれ、すぐ用意するからなグレン!!」

俺はカンザスとギルドの皆に別れと感謝を伝えてそのまま街を出た。

この追放は準備していなかった……だったらいっそのことなんの準備もせず旅をしてみるってのもたまにはいいかもしれない。

そう思った俺は隣国ルーヴェル帝国に向かうことにした。

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