短編小説 死の村にて

@katakurayuuki

死の村にて

しとしとと雨が降る。真っ黒い雨。比喩じゃなくて、ほんとに真っ黒。手のひらをかざすと絵の具が空から落ちてくるみたい。

 この雨は地上の世界で血が流れすぎると凝縮して黒くなり、雨となりここで降り注ぐのだ。この雨の数だけ人が地上で亡くなっている。

 けれど、それは私たちにとってどうにもならないこと。私たちの使命はこの黒い雨と共にやってくる人たちに本当に死んでいるのだと気づかせて死の世界に案内する役割だ。

 たまにいるのだ。死んでいるのに気づかず帰ろうとする人が。それは誰にとっても幸せじゃないことだから私たちは死者が来たらしっかり死への道へ案内する。

 今日も村長が死に気づいてない人たちを誘導していってるのを遠くで見た。

 あの村長は珍しくここの生まれではない。外から来たのだ。どうやってかは知らないが。

 その日はかつてないほど死の雨が降る日だった。小さなこの村は死を理解できぬ者たちにあふれどうにかなってしまいそうだった。

 その時、外の世界からやってきた彼女が数刻、この地をさまよったのち、死者を死の道へと案内してくれたのだ。彼女がいなければどうにかなっていたかもしれない。それ以来彼女は個々の村長になり、死者を導いてくれている。


 ある日、村で噂が立った。どうやら墓地で幽霊を見たらしい。

 私たちの村にも一応墓地はある。死者が通る村だからたまにここにいすわる死者もいるが皆丁寧に村長が導いてくれているのだが、最近そんな墓地に幽霊が出るというのだ。

 ちょっと見に行ってみよう。

 好奇心に身を任せ、雑事をこなした後、村の離れにある墓地に行ってみた。

 一つ一つ、見て回っているうちに何やら遠くから声が聞こえてきた。

 「おーーい、おーーい。こっちだ。はやくきてくれーー」

 はっきりと聞こえる。こんな死者は珍しい。音が成る方へと走ってみるとそこにはしゃべる墓があった。

 「おう、じょうちゃん。俺がわかるか?俺の声が聞こえるか?」

 「聞こえるよ。っていうかうるさいよ。あなたなんなの?」

 「俺か?俺はしがない魔法使いさ。ちょっと死んだあと生き返る魔法を研究してたんだが、これは成功したのかな?嬢ちゃんからはどう見える?なんだか動けないんだ。」

 「よくわかんないけれど、あなた、墓に憑依してるみたいだよ。さっきから墓にスピーカーがついてるのかと思った」

 「なんじゃこりゃ?成功したのか失敗したのか分かんねーじゃねーーか?所でここは死者の国なのか?」

 「ここはその通り道。死者の国じゃないよ」

 「そうなのかー。残念な気もするがそうでない気もする。どうやら死んだとき魔法で生き返ることだけを考えたら目的の事は忘れちまったらしい。俺は一体どうなっちまうんだ?」

 「ちょっとまってて、村長が木っと何とかするよ」

 少し待っていると、騒ぎに気付いたのか大人たちがやってきた。事を理解したので村長を呼んでもらい、ちょっとまってると。

 「嬢ちゃん、ちょっと人形持ってるかい?」

 「持ってるけれど、それがどうしたの?」

 「ここで動けないのもなんだ。供えてくれれば、その人形に憑依できる気がするんだ。頼むよ。一生のお願いだ!」

 元気な声で頼まれてなんだか面倒になった私は持っていた人形を墓に供えてみた。

 すると墓ではなく人形から声がしたのだ。

 「やった!成功だ!おれってやっぱ天才だなぁ!」

 「もう死んでるけれどね。」

 そんなことをしゃべってると村長がやってきた。村長は人形の声に驚いてたが、事情を訊き、この人形を死者の国へ持っていくという。

 「俺を死者の国へ持っていくのかい?せっかく魔法で生き返ったのに?」

 「生き返ったって、あんたなんで生き返るか忘れちまったんだろ?まったく、あんたは昔から変わってないね。ほんと。でもちょっとうれしいよ。」

 そういうと村長はしゃべる人形とあれこれしゃべりながら死者の国へと歩いて行った。

 村長はそれきり帰ってこない。

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