サンデーなカフェ ールファポリスー

ー明日のこの時間は、「アンドロメダ超えて、君へ」をお送りいたします


つけっぱなしのテレビを消した。


何かをしたくなった。

いや、正確には「どこかに行きたい」と思った。昨日、美容室で髪を整えてもらってから、世界のピントがほんの少し合った気がする。

まだ鏡は直視できない。けど……今日くらいなら、ちょっと出かけても、罰は当たらない気がした。


クローゼットを開けて、しばらく突っ立った。
新しい服は、ない。あるのは、何となく着続けてきた、地味なトップスとデニムと、
一度も似合うかどうか確かめずに買った、くすんだピンクのカーディガン。

「……これで、行く?」

声に出してみたけど、誰も止めない。
晋太郎も無言で、壁にもたれてこちらを見ている。

「見た目で勝負すんのは、そのうちでいいんじゃね? 今日は行ったことが勝ちだろ」

その言葉をお守りのように握って、ドアノブに手をかけたとき、自分が朝ごはんからずっとバニティネルをつけたままだと気づいた。


でも、もうそのままでいいやと思った


玄関を出た。玄関のドアを閉めて、一歩外に出ると、足元から地面のひんやりが伝わった。薄いスニーカーのソール越しに感じる


向かったのは、近所にできたカフェ。
駅前の再開発でできたチェーン店で、SNSで若い子たちがよく写真を撮っているのを見たことがある。店名は確か「ルファポリス」だったか。

…正確には流しっぱなしのテレビで、吞楪とかいう音楽家がカフェでサウンドをデザインしたりちょっと目を離した隙に彼女連れでも行っていたのを横目で見ていたからなんだけど。


ふとカフェのガラスに映った自分の姿を見て、バニティネルをかけたままだったことに気づく。外そうか迷ったけど、結局そのままにした。吞楪が彼女連れでくるなら、私も晋太郎と一緒、これで負けない。思い知ったか吞楪め!あと彼女のソラめ!!


と思った時、ガラスの中に見えるのは本物のカップル。女の子同士。親子連れ。カウンター席でひとりで本を読んでいる人もいた。


「こ、こんな格好で入っていいのかな……?」


恐る恐る店内に入り、


注文したのは、季節限定のアイスピーチティー。「インスタ映えしますよ」と店員が言ってくれたのがちょっと嬉しかった。

窓際の席に座って、ストローを差す。
カップの向こうに、晋太郎の姿がぼんやりと現れる。

「どうよ、日曜の街。人間、けっこう悪くねぇだろ?」

「……ちょっとだけ、ね」


ピーチティーは甘くて、少しだけ、世界が優しくなった気がした。


窓際の席。ピーチティーは、思ったより甘かった。

でも、それがちょうどよかった。

この街の空気が、まだ少しだけ冷たいから。


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