第7話 忍びに儂の息のかかった者もおる
小太郎と衣茅は山間(やまあい)の村に帰省した。そこは衣茅が小太郎に忍術を叩き込まれた修行の地でもある。
黄金色の田畑を眺めながら小太郎は言った。
「儂もわかっておった」
衣茅は前髪の隙間から師の隆々とした背中を眺めた。
「服部様の考えは。されど知らぬを通した」
初めて聞かされた。衣茅は訊ねた。
「それは何ゆえでござりますか?」
二人の視界に鍬を振るう農夫の姿が入った。作務衣に目立った汚れはない。小太郎は蟋蟀(こおろぎ)の声に切り替えた。
(諮られねば我らの動きが上忍三家と一蓮托生であること、甲賀に知れよう)
衣茅はなぜ師が蟋蟀の声を使ったのか察した。あの農夫は間諜である。然(さ)すれば自分たちしか通じ合えない符牒を使うしかない。よって衣茅も鈴虫の声に切り替えた。
(影武者と知って暗殺を指嗾(しそう)されたのは、相手の策に嵌ったと見せかけるためでござりますか?)
(左様)
(服部様はそのことを・・・)
(無論知らぬ。服部様が差し向けた忍びに儂の息のかかった者もおるのじゃ)
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