第4話 忍び寄る足音


「アレキサンドリアを取り戻す前に、ちょっと寄る所がある」

 バステト様はそう言うと、太陽神ラーの神殿跡へと進む


 ラーの神殿と言っても、3,000年前に建てられた物だ、風砂に晒され盗掘に合いかなり朽ち果てている

 プトレマイオスも神話時代の遺跡保全など気にも留めて居なかった

 罰当たりも甚だしい


「そうだな、神罰を下さねばならぬな ♪」

 バステト様は何だかとても機嫌が良いけど、今サラッと恐い事言わなかった ?


「申し訳御座いません!私が至らぬばかりに」

「クレオが謝る事では無かろう、この3,000年の間に、我ら神々への畏敬の念が薄れてしまったのだ …… 3,000年は人間にとっては長過ぎる」


 バステト様は遺跡の前に佇むと、胡座を組み何やら瞑想し始めた

 良く聞くと、何やら小さな声で何事か呟いていらっしゃる


 暫くすると、神殿の中から人影が出て来た

 と言っても、" 人間 " では無い

 バステト様と同じ様に、頭上に猫の耳が生えて、お尻には長い尻尾もある


 彼女( ?)はバステト様の前に跪き頭を垂れる

「お久しュうゴ … ザイまス」

 発音が少し変だ


「む …… 流石に3,000年間メンテナンスして無いから、調子が悪いのか ?」


「申シワ … ケ御座いまセん … 自己シン断プログラム起動 …… 修復しマスpーーー!」


 3秒ほどで、少女は顔を上げる

 金色の瞳が赤、黄、緑と色が変わり、口が物凄いスピードで開け閉じされる


「東◯特許許可局許可局長、赤マグヌッソ封鎖、黄マグヌッソ封鎖、青マグヌッソ封鎖、言えました。言語データエラー修復完了」

 因みに、この頃日本は弥生時代である


 ていうか、早すぎて良く聞き取れ無かった


 早口言葉にしても早すぎる

 この子も人間じゃ無い


「うむ、此れは妾が奴隷代わりに使役しておった " ニャンドロイド " と言う」

 

「バステト様と同じ様に、どなたかの魂が込められていらっしゃるのでしょうか ?」


「なかなかナイス質問だクレオ ♡ ニャンドロイドは生物では無い、アレには演算補助用にコピーされた猫の魂がインストールされておる」

 また難しい専門用語が出て来たわ

 バステロイドとニャンドロイドは似てるけど同じなのかしら ?


「解りやすく言うと、ニャンドロイドはバステロイドの大量生産向き廉価版だ」

 廉価版 …… え、大量生産 ?もしかして、こんなのがまだ沢山居るって事!?

「うむ、ブバスティスへ行くぞ、軍勢を整えて王都を奪還するのだ!」


 ブバスティスはバステト神殿の在る都市だ

 エジプト王国の中でも、特にバステト信仰が強い …… でも、軍勢って言わなかった ?

 ニャンドロイドが沢山祀られて居るとか ?


「楽しみだな ♪」

「はぁ …… 」

 いえ、不安しか有りませんけど ……

 私が乗ってきた船を使い、ナイルを下る


 ニャンドロイドがバタ足で船を推してくれるのだけど、これがとんでもなく速い

 この時代に " ノット " と言う速度概念は無いけど、恐らく60ノット以上は出ている

 時速に換算すると約110km/h

 現代の高速ジェットボートでも出せない


 当然、船は吃水の浅いごく普通の河舟だから、水の抵抗で、良くジャンプしてしまう

 その度に船がバラバラに壊れてしまうのでは無いかと心配するのだけど、バステト様は私の隣で風を受けて高笑いなさって居られた

「ワハハハハハ!!速い!速いぞクレオ ♡」


 本来24日かかる船路を、僅か半日足らずで終わらせてしまった

 とにかく凄いわニャンドロイド


 これ、ニャンドロイド単体で泳いだら、もっと速いのかしら ?

「うん ?ニャンドロイドは人間と違い、水に浮かないから板や小舟に掴まらないと泳ぐ事は出来んぞ ?」

 えっ、そうなんだ


「その代わり、人間と違い水の中でも活動出来るから、水底を走る事は出来る …… とは言え、水の抵抗は大きいからこんな速度は出せんがな」


 


 

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