第11話:ぼんやり
4限は丸々休憩で、教室内はすこしざわつきはじめた。隣同士で話もしているようだ。正洋も椅子から体を横向けにして教室右側をみている。
隣の席の女子と目線をあわせないように、廊下側をながめる。それでもほんのすこしのあいだ、隣の女子と目があう、彼女は姿勢を正洋側にくずした、すこし目が合った気がした、目の端に名札を捉える、愛称は「キャンディ」だった。一瞬のことだが沈黙の三点リーダーが流れた気がする。「キャンディ」は無言で机の右側面のフックにかけた鞄から本をとりだし読み始めた。
正洋(?漫画かな?)
その時、後方からチカチカが背中をつんつんと右指で突く
顔と態勢を向ける正洋、すこし呆ける顔を意識した
チカチカ「まーこよろしくね」
改めての挨拶
まーこ「うん。よろしく。」響かない程度の少量の声で応えた。
ちかちか「初日だしね」
まーこ「そうやねえ」
ちかちか「お昼どうするの?給食でないよ、ここ」
まーこ「弁当だよ、つくってもらった、学食もいいけどね」
チカチカ「あ、そう、わたしも弁当、一緒に食べるのへんか」
まーこ「いやぁ、うーん」
チカチカ「お互い知っている人いないもんね、でもいいや、一人で食べる」
まーこ「あいーー」
チカチカ(ふむふむ、まあ、いいざんしょ、もうすこし観察しよ。別に肉食じゃないもん、隣の子とすこし話しよかな)
正洋は、右手に頬をのせる、すこし緊張していたのでぼんやりすることにした。
正洋(午後は部活動見学か、帰ってもいいらしいし、加入は強制されているわけでもないけど、でもなんかやるのもいいけど、窮屈なリズムもやだな)
後ろの席ではすこし会話がきこえる、チカチカが隣の席の女子と会話をはじめたようだ。
正洋はすこし緊張が和らぐのを感じる、おもわず口慰めに、どうでもいい言葉を口にしたかった。
正洋(うひょーん、まあ初日か、どうなのかね。すこしずつ周囲とうちとけていくのかね。しかし女子がおおいな、可愛いし、警戒してるよなぁ)
正洋は動作をおさえて、教室内を見渡す、男子生徒は自分を含めて4名だが、席の配置は近いとはいえない。伊達眼鏡は腕を組んで、椅子にすこしもたれているようだ。
ちゃんこは、机に腕をまくらにしてつっぷしている、菩薩は、正洋と同じて周囲をみわたしているようだ、目が合う。お互い別に合図をおくるわけでもなく一瞥でおわった。
教室にいる生徒はすこしずつ思い思いにすごしはじめている。すこしざわついた雰囲気を感じながら正洋はぼんやりしていた。
右隣のキャンディをみると、口に何か含んでいるようだ。棒状のものから飴だろう。すこし甘い香りがする、視線をうごかすと 2限で質問をしていた「にんまり」が
菓子袋をあけているようだ。ゴミの始末をすれば、多少の軽食はゆるされている。甘い香りがただよってきた。クッキーだろうと正洋は思った。
「にんまり」の方から会話の断片で「原ちゃん」という声もきこえる。
正洋(編成したらしいけど、知り合いもいるよな。他の女子もそうか。)
正洋のしかけている夢想には、物語に自分がでてくる、登場人物たちは美麗衆目がおおい。しかし意識に介入してくるのは、学内でみかける女子や蛍の姿だ。
妄想してしまうほど、綺麗な娘だらけだった。
正洋(うひょーん)
これからの学生生活にすこし期待しつつも、いまだ夢想の意識は偶像が占める正洋だった。
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