第7話:自己紹介
「伊達眼鏡」と名乗った男子生徒の自己紹介がはじまった。眼鏡をかけているのが特徴で、すこし背は高い。クラスに入ってきたときは襟詰めを閉めていたようだが、今は外している。
伊達眼鏡「愛称は伊達眼鏡ですが、そうです伊達です。なんとなく眼鏡が合うとおもってつけています。地域の小学校からかよっていません。どこかは言えません。入学してまだ緊張しています。趣味は、野鳥の画像をみること、ぼけっとすることです。これからよろしくお願いします。」
話し終えると一礼して、「蛍」を見る。これで終わりということだろう。
蛍「はい、いいです。1年よろしくね?んじゃ次いこっか、次はぁ・・Aの21番の君ね」
男子生徒「ああ、はい」
番号を呼ばれた男子生徒と「伊達眼鏡」が入れ違いになり、壇上にたつ。正洋の目には呼ばれた生徒は、なかなかの男前にみえた。
男子生徒「こんにちは・・・」
「蛍」がさえぎる
蛍「愛称は言ってね・・それ大事」
ちゃんこ「ああ、はい。愛称は「ちゃんこ」です。ええ、はい別に力士とか関係ありません。なんでこれなのかな。」
ちゃんこ「ええと、はい、入学してまだ緊張しています。趣味はなんか虚空をみつめたりしています。時間がすぎさってほしいです。短い学生生活とおもいますがよろしくおねがいします」
蛍「いえい、緊張してるかんじしないなぁ、ちゃんこ好きとかじゃないの?」
沈黙が続くクラスの雰囲気に「蛍」が発言をする。和ませようとしているのか、と正洋は感じた。
ちゃんこ「関係ないです。ちゃんこ。すこしずつ打ち解ければいいなと思います」
蛍「はい、よし。着席していいよー、次はねぇ Aー12の君」
正洋の緊張が強まる、順番がきた。以前の2名の自己紹介を聞きながら、頭の中でシミュレーションはしていた。話す内容も一応意識してある。
返事をして壇上にたつ。緊張はつよます、視野内には生徒がうつっている。ほとんどが女子生徒だが、一瞬の目くばせでも、容姿がかわいらしいと思えた。
自分だけが意識している一息をした後、自己紹介を始めた。
まーこ「はじめまして、ええと、愛称は「まーこ」です。趣味は、ゲーム、TV、動画をみることです。食べるのもすきです。クラスに見知った顔はあるのか・・なぁ。すこし緊張しています。これから1年間よろしくお願いします。何か質問はありますか?」
沈黙がクラスにながれる、正洋は瞬間的に失敗を悟る。
蛍「ええーと、じゃあねえー、給食は楽しみにしててねぇ。なんかぁ栄養たっぷりだって?」
正洋は「蛍」の援護射撃を理解した。
まーこ「ああ、はい楽しみにしています。よろしくお願いします」
蛍「いいよーじゃあ、次はA-9番の君ね」」
正洋の自己紹介がおわった。緊張と失敗の反動の高鳴りが胸ののこる。意識的に静かに籍にもどった。
次の男子生徒の自己紹介がはじまる。正洋は直前の緊張であまり頭にはいってこなかった。愛称は、確か「菩薩」だったはずだ。
男子生徒の自己紹介がおわった。
蛍「いいよ。じゃあ、次は女子の自己紹介しよっか。教師もいるからそんなにきんちょうしなくていいよ。じゃあリストのとおり左側から順番に挨拶して。愛称は言ってね」
クラスの左前、一番目の女子生徒からの自己紹介がはじまった。正洋がふりかえってみると、やはり愛称とその容貌に意識がうばわれる。美少女がおおい。
違和感が正洋に走る。
正洋(なんだ、かわいいのがおおいぞ。地区の子供じゃないのか?あ、だれだっけ、評判だった娘もいる。でも他もかわいいな。)
愛称のリストはもらえている。「カチカチ」 「もにょ」 「アルフォート」 「シャンプー」 「キャンディ」 「にんまり」 などだ。「チカチカ」というのは同じ地元の娘だと正洋は思った。
HRからであるが、1限と兼ねているらしい。45分の時間を終えて自己紹介がおわる。
蛍「はい、自己紹介おわったね。これから1年仲良くね。うーん。まだかなぁ。うん。なかよくね。何かあったら相談するように。カウンセラーとかも月2回、来校するから利用するときは相談してね。それじゃ休憩時間がおわったらいよいよ授業だよ。まずは学内の事から説明するから、少し休憩ーー次も私だよ」
「蛍」がクラスからでていく。
クラスがざわつきはじめた。正洋は他の男子生徒と席が近いわけでもなく、周囲を観察する。トイレに行く生徒、勇気をだしているのか隣の席の生徒にに話しかけるのもいる。
正洋がふと後ろをみる。教室の窓側から2番目、一番うしろだ。見たことのある顔だった。多分、地元の小学校ではその容姿の美しさから人気のあった娘ではなかったか。愛称は「チカチカ」だったはずだ。
正洋(チカチカだったな。なんとか千佳だっけ)
一瞥した一瞬で正洋は思考する。「チカチカ」は正洋の視線に気づいて、席に座った状態で右手を小刻みにふる。
チカチカ「あ、い・・・まーこ・・君?同じ小学だっけ・・だっけ?」
小さな声で「チカチカ」が話す。
まーこ「・・・うん?そうだね?いやぁ」
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