第4話:覚醒はいまだ・・・

明日を登校日に控えた前日の昼をむかえようとしている時間帯、正洋は自宅の布団の上でぼんやりしていた。明日は中等教育のデビューだ。どうも感じるかぎりでは小学校の見知った顔は全員いるとはかぎらない、そんな感じがする。寿洋が何度も読んだ漫画をよんでいる。母は仕事、直樹はどこかへ消えた、純子は友達の家に行っているはず。そろそろ昼の時間だ、お腹がすいたというより時間帯が近づいたから意識する感じだ。まだ食欲に意識をうばわれる年頃であろう。寿洋に、昼食の内容を相談すると、TVのCMを見ていたせいか答える。


寿洋「uber でいいだろ。頼む」

正洋「わかった」


家の経済状況が裕福かどうかよくわかってない。母が働いているが、どこでか不明だし、ときどきすっきりした顔で帰ってくる。直樹も軍資金はなかなかを意味する言葉を吐いたことがあるのを憶えてる。スマートフォンでuberアプリを立ちあげる。寿洋の要望でチキンを頼んだ。uberが出前アプリなのはわかっている。配達員は雇用条件にはまだ知識がたりていなかった。雇われているのかと疑問と感じることもあった。アプリで注文状態を確認する。配達員はきまって、店舗で商品を受け取ったようだ。プロフィールをみる。一瞥、なぜか名前がよく記憶できなかった。結構なベテランだとはわかったようだ。到着時間まで、だらだらしてすごす。現在の未知の世界、それが中等教育だった。まだ自身の可能性については霧の中だった。将来自分がどうなるのか?具体的なイメージすらわかなかった。知識が足りていない事実すら気づけない年ごろ。配達員が自宅の綱島住宅に到着する。対面受け取りだ、インターフォンが鳴らされる、思わず正洋が答える。


正洋「はーい」


即座、といっていい反応が返ってくる。


「ウーバーイーツです」


正洋が、相槌をかえしながら玄関の扉を開ける。最初に目に飛び込んできたのは脚だった。太い、おもわず感想を頭の中で反芻していた。

商品をうけとる、顔もみた。坊主頭で眼鏡をかけていた。すこし汗をかいている。お礼を述べ受け取る。しかし正洋の中に何か違和感が起きていた。

脚の太さだけではない、配達員を見た瞬間に走る感覚、強烈に相手のイメージが反芻される。それは口にはださなかったが、特に理由もよくわからなかった。

寿洋と二人してチキンを食べる。美味い。食事時間はお昼丁度ではなくすこし早かった。すこしだらだらして過ごす。明日は空き缶とペットボトルのゴミ捨て日だ。

しょうがないと感じ捨てに、ゴミがつまった袋をもって1階におりる。ゴミ捨て場に移動する最中、意識が赤に奪われる。おもわず立ち止まる。赤、いやピンクだった。対角線上に張り付けられた付箋だった。中心にはQRコードが浮かんでいる。なんだ?と感じ、近づいてみる。ピンクの付箋が対角線上に挟むようにQRコードが張り付けられていた。すこし沈黙して、読み取ろうと思うも、スマホを持っていない事実に気付く。ゴミ捨て場でゴミを捨て、自宅に戻り、スマートフォンをもって、もう一度1階の掲示板前に戻る。QRを読み取る、何かページが開くようだ。ネットのサイトと感じたが、ページに表記されたロゴでEVERYNORTOとわかる。


正洋「なんだこれ・・自己紹介、さっきの配達員だ。やるなぁ。うん。読んでみるか」


QRコードを撮影し、自宅に戻る、暇であるのも理由であったが、先ほどの配達員になにかを感じていたのは確かだった。ページの内容を読む。

自己紹介と、kindleとnote販売している書籍の宣伝だった。論文らしい。論文とは何か?当時の正洋は疑問に感じるも、ページにEXCELファイルとPDFが貼ってある。

サービスらしい。よく考えずにダウンロードしてみてみる。スマートフォンでは見づらいため、パソコンに移動させた。EXCELとPDFの内容を確かめた。


正洋(お、なんだこのEXCEL、うーん、いやぁよくできているなぁ。あ、〇にすると数、カウントされている。どうやって作ったんだろう)


EXCELはファイル名は「期待値効果」と表記されていた。誰が作成したか?それはよくわからなかったが、弄るうちによくできたファイルだと思った。

PDFの内容は、読み解くのに15分かかった。一部表記が白で塗りつぶされている。しかし先ほどの配達員だろうか、彼が書いたものであることはわかった。ページ下部に奥付けと称し、写真が貼ってある。期待値効果、どうもインターフォンを押した際の相手の反応確率の手法の統計を確認した内容であるようだった。

正洋はEVERYNORTの宣伝ページを読む。論文・・ロ・ン・ブ・ン? 当時の正洋には未知の領域だった。kindleとnoteの販売ページのリンクも見る。PDFの内容の完全版を販売しているようだった。280円、安い。しかし当時の正洋には購入は判断力を有する額であった。内容は面白いそうなのはわかる。30ページ。


正洋(どうしよ。買うか?noteなら買えそうだ・・・paypayだろ?)


noteのサイトから購入をする。どうもnoteはPDFバージョンのダウンロードのようだ。


正洋「お、よしよし」


PDFをパソコンで読む。もう一度15分かけた。読んだ内容は理解できた気がする。どうもあの配達員が実際にuberの配達をしながら、実験し集計しその内容らしかった。布団でねころがり、正洋は考える。可能性の発露を、それは希望だった。配達員の宣伝ページに表記されている。今の現実を実直に履行しながら、別の可能性への希望を託すことを。シンパシーを感じる。すこし新鮮な気持ちだった。

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