無形の美 カクヨムver
赤澤月光
第1話
21世紀のある日、世界で日本だけが生き残っていた、もしもの話。世界中で顔の整形手術が盛んに行われていたが、ある画期的な手術が登場した。それは「無形手術」と呼ばれ、施術を受けた人の顔がまるでのっぺらぼうのように、元々の目鼻口という特徴が消失し、まったく新しい形の美しさを与えるものだった。
初めは小さな都市から始まったこの手術は、SNSを通じて瞬く間に世界中に広がり、多くの人々が「今までの自身のアイデンティティを捨てて、真の自由を手に入れよう」と考え始めた。彼らは、自分の顔が無形になることで、他人の目を気にせず、内面的な美しさを重視することを求めてみたのだった。
無形手術を受けることで、様々な顔の特徴が消え、のっぺらぼうのように、平らで滑らかな表面だけが残る。人々はこの新しい美しさに感銘を受け、街中には無形になった個性が見えない人々が増えていく。彼らは名前を呼ばれるとき、顔を見なくても誰が誰だか分からない新しいシステムを受け入れるようになっていった。
しかし、このブームの影ではマスコミの情報操作も働き。無形手術を受けた人々が受けなかった人々の人口をこえるにあたり。間に新たな溝と課題が生まれた。かつては多様な顔の美しさを称賛していた社会が、時代に逆戻りするかのように。今や「無形の価値」を持たない人々を冷遇し始めたのだ。
一方で、無形手術を受けた人々の間にもあらためて 葛藤が生まれ始めた。彼らは、自分たちの新たな姿に困惑し、顔のなくなった自分がどう生きるか悩むようになった。自分の個性及び存在感や独自性が薄まり、人間関係の構築にも影響が出てきた。
そこで、一人の若い女性、名を貍名(リナ)という彼女は、無形手術を受けたものの、その後の生活に悩んでいた。彼女は、自分の個性や存在価値を見出すために、自らの物語を見つけようと決意する。最初は自分の顔を変えたことを後悔していたが、次第に「顔が無くても、人との繋がりを築く方法は それなりにあるのではないか」と気づく。
リナはSNSを使って、自らの経験や感情を率直に共有、拡散し始めた。彼女の投稿は次第に注目を浴び、特に無形手術を受けた人々からの共感を呼び起こした。彼女は、自分のもとからある内面的な美しさや思いやりの大切さを伝えることで、誰もが どんな顔になっても 自分自身を受け入れることの重要性を説いていく。
そして、リナの活動を通じて、社会は徐々に徐々に変わり始めた。無形手術を受けた人々も、自分の新たな姿を受け入れつつ、他者と 無形手術を受けなかった人とも共感する力を強めていく。無形という新しい選択肢が、真の自由や美しさについての再評価をもたらし、人々がかつての時代以上に、自分を取り戻す手助けとなったのだった。
こうして、無形手術は一時的なブームであったと思われたが。一時的なブームには終わらずに、リナの活動を通じて再び多様性の重要性が広まり、顔の有無に関わらず、全ての人々がそれなりの美しさと生きる価値を持っているというメッセージを発信し続け、共鳴していくのだった。奇跡は起こった。
無形の美 カクヨムver 赤澤月光 @TOPPAKOU750
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