第18話 なぜか、ゆるざまぁクーデター

王都は、騒然としていた。


国王の悪政に対する国民の不満が爆発し、ついにクーデターが勃発したのだ。しかし、それは、大介たちが直接関与することなく、「なぜか」国王の悪事が次々と明るみに出て、彼の失策が連鎖的にクーデターを加速させるという、奇妙な形での展開だった。


王城の広場には、武装した諸侯の兵と、若き騎士団長に率いられた騎士たちが集結していた。彼らの前には、怒りに燃える国民の群衆。


「国王陛下は、我々国民を騙し、獣人を虐げていた! その証拠がこれだ!」


元宮廷魔導師の老いた男が、国王が国民から徴収した税金をスキルカードのガチャに使っていることを示す帳簿を掲げた。国民は怒号を上げる。


国王は、執務室でその報告を受けていた。


「バカな! なぜそのような情報が漏れるのだ!?」


彼は信じられないという顔で叫んだ。ポン助のへっぽこな情報網と、へっぽこ魔王軍のコミカルな諜報活動が、国王の知らないところで着々と彼の首を絞めていたのだ。


その時だった。王城のバルコニーに、へっぽこ召喚士ポン助が現れた。彼のタヌキの耳は、興奮でぴくぴくと動いている。


「【実況】……ゆるざまぁ、来たわ! 今、国王の悪事が、白日の下に晒されようとしているっス!」


ポン助はそう叫び、自作の拡声器で実況を始めた。へっぽこ魔王軍のゴブリンたちが、ポン助の足元で「へい! へい!」と合いの手を入れる。その軽妙な実況は、民衆の怒りをさらに煽った。


「獣人への理不尽な法律も公になったぞ! 月のない夜は外出禁止、毛皮税……こんな非人道的なことを、国王は行っていたのだ!」


次々と公になる国王の獣人虐待を含む悪事に、国民の怒りは頂点に達した。王城の兵士たちも、動揺を隠せない。国王の支持は、もはや地に落ちた。


大介は、離れた場所からその様子を静かに見守っていた。玉藻は彼の隣で腕を組み、不敵な笑みを浮かべている。


「フン。しょーもない人間やな。自ら滅びに行くとはな」


(こういう奴らが、彼女を“魔王”にしたのか……)


大介のモノローグで、彼の内面に静かな怒りが湧き上がる。その怒りは、玉藻がかつて背負った悲しみと重なり、彼の心に深く刻まれた。


国王は、プライドを傷つけられ、自らの悪行が露呈したことで、あっけなく追放されることとなった。彼の末路は、滑稽なほどに呆気ないものだった。


「わ、わしは国王だぞ! このわしが、こんなところで……!」


国王は衛兵に引きずられ、無様に王城を去っていった。ポン助は彼の後ろ姿に向かって、高らかに叫んだ。


「【実況】……国王陛下、ざまぁっス! これが、安上がりな召喚を企んだ者の末路っスよ!」


ポン助のコミカルな実況が、民衆の歓声と混じり合う。それは、読者にストレスを与えない、まさに「ゆるざまぁ」だった。


クーデターの混乱に乗じて、大介たちは行動を開始した。虐げられていた獣人たちを安全な場所へ誘導し、困っている人々がいれば、彼らに温かい料理を振る舞った。


大人の玉藻は、その知性と能力で状況を冷静に判断し、大介をサポートする。混乱する人々を的確に誘導し、秩序を取り戻す手助けをした。彼女の指示は明確で、人々は自然と彼女に従った。


玉藻の内心では、国王が消え、ようやく世界が平和になると満足していた。


——こうして、世界は新たな時代を迎えた。


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【魔王のわるだくみノート】


フン! 人間め、何を勘違いしとるんや! ワシは別に、お前なんかに抱きしめられたいわけちゃうし! でも、あの時、なんか力が暴走したのは、この人間のせいな気がするんやけど……。あんな言葉、言うてへんのに、なんでワシの心臓がドキドキしとるんやろ! 次は、ワシの記憶の奥底に眠る、しょーもない秘密が明かされるらしいな! ワシの人生、この人間がおる限り、退屈させへんようやで!


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次回予告


フンッ! 人間め、何を勘違いしとるんや! ワシは別に、お前なんかに抱きしめられたいわけちゃうし! でも、あの時、なんか力が暴走したのは、この人間のせいな気がするんやけど……。あんな言葉、言うてへんのに、なんでワシの心臓がドキドキしとるんやろ! 次は、ワシの記憶の奥底に眠る、しょーもない秘密が明かされるらしいな! ワシの人生、この人間がおる限り、退屈させへんようやで!


次回 第19話 新たな魔王城、正式稼働!

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