第12話 新たな魔王城、発見!?
旅を続ける一行は、鬱蒼と茂る森の奥で、ひっそりと佇む古城の跡地を発見した。風が吹き抜け、枯れた蔦が壁に絡みつく。どこか寂れた空気が漂うが、大介の目は輝いていた。
「へえ、これはいいな! ここならキャンプ地として最高だ!」
生粋のキャンプ好きである彼の直感が、ここが終の住処に最適だと告げている。彼は早速、古城の周りを探索し始めた。
「人間、こんなボロボロの場所が、どこがいいんや?」
玉藻は不審げに首を傾げた。ポン助とへっぽこ魔王軍も、不安そうに辺りを見回している。しかし、玉藻の心には、どこか懐かしい感覚が芽生え始めていた。荒廃した城の石壁に触れると、微かな魔力の残滓を感じる。
(どこかで……前に、ここに来たことがあるような……)
玉藻はそんなことを考えながら、古城の奥へと足を踏み入れた。へっぽこ魔王軍も、かつての魔王城とは違うが、ここを新たな拠点とすることに賛同の声を上げた。
「へい! 魔王様の新しいお城っス!」
「ここでなら、ワシらも役に立てるっス!」
大介は、古城の最深部へと続く階段を見つけた。石造りの階段はひんやりとし、湿った空気が漂っている。玉藻は、その階段を降りることを躊躇した。彼女の身体が、微かに震えている。
「な、なんか、嫌な予感がするんやけど……」
玉藻はそう呟き、大介の服の裾をぎゅっと掴んだ。彼女の心臓が、ドクンと音を立てる。ここには、彼女が忘れてしまった、あるいは封じ込めていた記憶があるのかもしれない。
「大丈夫だよ。俺がそばにいる」
大介は優しく玉藻の手を握り、階段を降りていく。玉藻は戸惑いつつも、大介の手を振り払うことはしなかった。
最深部に辿り着くと、そこは薄暗い広間だった。中央には、巨大な石碑が鎮座している。石碑には、古の文字が刻まれており、微かに魔力を放っていた。玉藻は石碑に近づくと、その文字に触れた。
その瞬間、玉藻の脳裏に、断片的な映像がフラッシュバックした。石碑の表面に、うっすらと青白い光が走り、玉藻の指先から小さな震動が伝わる。
(ここは……獣人たちが、虐げられながらも、希望を抱いた場所……そして、ワシが……彼らを、守ろうとした場所……?)
玉藻の意識が、過去と現在を行き来する。彼女の身体からは、微かに魔力が漏れ出す。大人の姿への変身ゲージが、極限まで高まっているのを感じる。変身解除の“ギリギリ限界”が、玉藻の魔力に迫っていた。
(もう、すぐに戻るはずなのに……どうして、こんなに保っているの……?)
玉藻は困惑する。変身が“ときめきに連動して持続している”ことに、無自覚ながらも気づき始めていた。その時、大介が玉藻の隣に立ち、石碑を見つめながら口を開いた。
「お前が誰だろうと……ずっと一緒にいてくれたら助かる」
大介の言葉が、玉藻の心に深く響く。玉藻の心臓が、ドキドキと高鳴った。それが、変身ゲージをさらに押し上げている。
「——その時、大介はまだ気づいていなかった。変身が解けた時に、何が起きるのかを。」
玉藻は、大介の無自覚な言葉にドキドキしながらも、変身が解除されることへの恐怖と、過去の記憶に囚われる苦痛で混乱していた。
その日の夜、大介と玉藻は、この古城を「新たな魔王城」として、拠点とすることを決意した。へっぽこ魔王軍もポン助も、それに賛同した。
王城では、国王の焦燥感が増していた。勇者が見つからず、国民の不満が高まる中、国王はさらに悪辣な手を打とうとしていた。
(ポン助よ、貴様はどこで何をしている!? 無能め!)
国王は、ポン助に対して送る「パワハラ手紙」の内容を具体的に示唆した。「お前は私の恥だ」「これ以上無駄な金を使わせるな」といった言葉が、彼の筆から生々しく綴られる。国王へのざまぁの伏線は、着実に強化されていく。
へっぽこ魔王軍の情報網が、国王の動きを密かに探っていた。虐げられた獣人たちの間では、希望の光が小さく灯り始めていた。ダーメガミは、遠い異空間から、この世界の調和を見守っていた。
——新たな魔王城に、それぞれの思惑が交錯する。
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【魔王のわるだくみノート】
フン! 人間め、ワシの新たな魔王城が決まったで! ボロボロやけど、まあ、このワシが拠点にする場所やからな、そのうち立派になるやろ! この人間も、ワシのわるだくみには気づいてへんみたいやし、案外簡単に王様どもをひっくり返せるかもしれへんな! フフフ……この旅も、なかなか面白いやんけ。
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次回予告
フン! 人間め、ワシの新たな魔王城が決まったで! ボロボロやけど、まあ、このワシが拠点にする場所やからな、そのうち立派になるやろ! 次は、あの人間とワシのしょーもない恋愛が進展するらしいが、ワシはそんなん認めへんからな! でも、なんでワシの力が、あの人間といると戻ってくるんやろ? ……アカンアカン! 考えるのはやめとこ!
次回 第13話 呼ばれた名前で、まだこのままで
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