その四 xx樹海の携帯

『なぁなぁ、あの誰もが知ってるくらい有名なxx樹海に興味はある?』


「あぁぁぁぁぁぁ!」


あの日から、俺はまともに寝れなくなった。


あの一件さえなければ…。


俺は高校2年生、kだ。

同級生である友人hと、オカルトサイトを巡ってた時だった。


『なぁなぁ、これ見ろよ!』


「何?」


俺は毎度のこと、大袈裟な反応をするkのことだ、また変なサイトで興奮してるのだろう。

そう思いながらも、kの好奇心を玩具のように操ったものに目を向けた。


「なんだ?これ……」


そこには、地元民ならもちろんのことだが、オカルト配信者の間でも度々名が上がるくらいの某有名な樹海にまつわる記事が開かれていた。


「樹海の……宝物……?」


自殺願望者の居場所とも言えるような場所に宝物なんて輝かしいものはないだろう。

どうせまた俺らのような好奇心に駆られてる時期を生きてる奴らが適当に作ったサイトだろ、と思いつつ、hを見た。


「樹海に宝なんてあるとしたら、自殺道具くらいじゃねぇの?」


『これを見てもまだ言えるか…?』


hがカーソルを合わせた文字列には、こう書いてあった。


「樹海といえば、暗いものばかりが連想されるでしょう!

  そんなあなた方には、宝探しをしてもらいたいです!

下記のリンクから、位置情報付きのお宝が待ち望んでいる鍵となるサイトに飛んでくださいませ!」


『今日の放課後、試してみない?』

「いや、俺はごめんだな。時間の無駄だろうし。」

『もし何も起きなかったらなんか奢るよ!

あっ、美人とか、そういうのは無し!』

「分かったよ。しゃあねぇなぁ。」



放課後、kとhは、樹海に行くことにした。樹海は人里離れた位置にある。


*数時間後…


kとhはGPS(位置情報サービス)を頼りに、樹海の入口に辿り着いた。GPSは樹海の真ん中あたりを示しており、おそらくそこに携帯があると思われる。

kとhは入口付近にある太い木にロープを結びつけ、樹海の中へ、歩みだす。樹海に入った途端、空気が重く、澱んだ感覚を二人は察していた。


どれくらい歩いただろうか…

「おぃ、ここじゃないか?」

「あぁ、そうみたいだ」

そこに携帯はあった、ジップロックに入っている。


ブー、ブー、


「こんな時間に誰だよ。って、」

「拾った携帯から鳴ってる…」


『ほら!言った通りちゃんと面白くなっただろ…』


嫌な予感を命中させるかのように携帯を見ると、既存の電話番号からの着信だった。

唐突な着信音に驚き、出るべきか、躊躇していたら、着信は切れた。



翌日、kは恐る恐る電話に出ると、相手は笑いながら”何か”を言ったが、着信終了した。その後、着信の繰り返しが数日にわたって、続く。


kは気が狂いそうなっていた。

「もういい加減にしてくれ!」


電話の向こうから何かが聞こえかけたが、そんな言葉に耳を傾けることもなく携帯を投げ割った。


その後に今度は、kの携帯に直接電話が入る。


無視したが、数日、着信が続き…kは疲労しきっていた。

kは知り合いのyoutuberに携帯から聞こえたボイスを分析してもらい、聞こえかけた言葉が鮮明にわかる。

はははははははははは、

笑い声と何かを擦っている音が聞こえ…

「貴方はすでに死んでいるのよ…」と女性の声がした。


kは驚きを隠せず、動揺している。

そう、kは樹海に入った時点で死んでおり…

hだけが死に物狂いで逃げられた。


kは孤独で樹海の中を彷徨う、外界とは分断されている事を知らずに。


「あぁぁぁぁぁぁ!」


あの日から、俺はまともに寝れなくなった。


あの一件さえなければ…。


※原案:エラ 執筆:えいる






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る