3巻 4章 1話
⭐️3章のあらすじ⭐️
この地域を牛耳る5人兄弟、スタンリー一家の次男シャーマン・マヌ・スタンリーの生け捕りに成功したクラウンたち。ナオミ刑事、小夜とともに、シャーマン・マヌに血の呪いをかけられた人々を助けるため、ポレポレという女性のシャーマンを訪ねてプロテア砦に向かった。そこには紛争や略奪で生活を奪われた農家やハンター達が暮らす農園があり、美食家のモナコにも再会した。ポレポレを連れて呪いの治療をしていたクラウンはポレポレと呪い返しをした。すると獄中で兄弟喧嘩が起き、次男のシャーマン・マヌは三男のメンサに殺されてしまったのだった。
クラウンたちはプロテア砦のハンターたちに討伐クエストを依頼され、滅びた街の討伐に向かう。ギルドとハンターたちでピストルプルーフと戦い、勝利し、取り戻した滅びた街は競売にかけられる事になった。滅びた街の片付けをしていたクラウン達は、塔の瓦礫の中から白骨死体を見つけた。鑑定すると死体は四男アナン・スタンリーだった、、。
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
2週間後。
競売の日。
ゼブ、エイムス、オースティン、クラウン、スノー、ブラスト、犬達はプリミティブ・ステーションの競売場に到着した。
正面のモニターには滅びた街の詳細や映像が流れている。モニター横には小さいステージ、向かいに椅子が並び、通路を挟んで横に3列、奥に3列が10ブロックある。
「あー、緊張してきた。札あげるのエイムス頼んだ。」ゼブは緊張からパドル札をエイムスに押し付けた。
エイムスはゼブにはバレない様に笑いをこらえて札を受け取った。クラウンは隣でクスクスした。後ろの席にオースティン、ブラスト、スノー、犬達は足元に座り、みな着席した。
しばらくして、競売に名乗りを上げた別の2組が現れそれぞれ着席した。最後に現れたのがスタンリー一家の代理人の男だった。会場の後ろのブロックに一人で座った。スーツにサングラス、革の手袋、トランクを持った薄毛の中年の男だ。
4組全員が揃うと、扉は閉まり、オークショニアが壇上に立ち、開始のガベルを鳴らした。
トン!
モニターが2画面になり、価格の表示画面が加わった。
「最初入札単位は1口1000クレジットからです。滅びた街、1万クレジットからスタートです!」
外資系企業の貴婦人が札を上げた。
「2万。」
スタンリー一家の代理人が札を上げる。
「2万5千。」
エイムスが札を上げる。
「3万!」
ゼブは下唇を噛み、足を細かくゆする。
少し間を置いて、大手企業の代表の紳士も札を上げる。
「3万、1千!」
「3万5千。」スタンリー一家の代理人。
「3万8千。」貴婦人。
「3万9千。」紳士。
「4万!」エイムス。
少し間が空く。
「4万クレジット、他にいませんか?」オークショニア。
「4万3千っ!」紳士は少し声が震えた。
「4万5千!」貴婦人が声を張る。
「4万8千。」スタンリー一家の代理人。
エイムスは小声でゼブに言った。
「全部いっていいか?」
ゼブはうなずく。
「5万!」エイムスは目を凝らし大きく息を吐いた。
「5万でました!他にいませんか?」オークショニアは会場を見渡す。
紳士は首を横に振った。
貴婦人は悩んでいる。
「5万1千。」スタンリー一家の代理人。
ゼブが目をぎゅっとつむる。
クラウンがエイムスに囁いた。
「僕、2口乗ります。」
エイムスは言った。「いいのか?大金だぞ。」
クラウンがうなずくとスノーとブラストがクラウンの肩に手を乗せた。
「オレも1口乗った!シシッ。」
「オレも1口。」
エイムスが札を上げる。
「5万2千!」
オースティンが喜ぶ。「いいのかー?!」ブラストとスノーはうなずく。
「5万2千!5万2千!」オークショニア。
貴婦人も諦め顔で首を横に振った。
「5万、、5万3千。」スタンリー一家の代理人は振り絞るような小さな声で言った。
「5万4千!!」エイムスは間髪入れず札を上げた。
会場がどよめいた。
ゼブは呟いた。
「頼む〜、頼む〜、ふーっ!」
「5万4千!他にいませんか?、、、いませんか?!」
会場は静まり返った。
オークショニアはガベルを鳴らした。
コンコン!
「5万4千クレジットでプロテア砦の落札です!!」
ハンターとギルドは抱き合って喜んだ。
「落札できたー!」「っしゃー!」「よしっ!」
「イエー!」「ありがとう!」「やったー!」
「落札おめでとうございます!エイムス様、新しい街の名は?」オークショニアが笑顔でたずねる。
「フェニックス、フェニックスシティだ。」エイムスはゼブとオースティンを見て言った。2人は目を潤ませうなずく。
「滅びた街、改め、フェニックスシティの誕生です!!」オークショニアは拍手した。
会場からも拍手が起きた。
クラウンはシッポをブンブン振るチョコに言った。「スタンリー一家の代理人の追跡、頼んだよ。」
扉が開くと、スタンリー一家の代理人はすぐさま立ち去り、チョコとゴーストで追跡した。
ゼブが元気を取り戻した。「焦ったー。ありがとうな。街づくりに参加して大丈夫かー?」
ブラストはニコニコしている。「うん!クラウン、街づくりのゲームも得意っしょ?」
スノーも嬉しさを抑えきれない。「ゲームでめちゃめちゃ稼いでたよな。マジでクラウンは上手いよ。シシッ。」
クラウンは嬉しくてニコニコしている。
「おいおい、ゲームと現実は違うんだぞ?ははは。何からやるかわかってんのかー?」ゼブはニヤケが止まらない。
「うん、インフラからでしょ?」クラウンは笑顔で言った。
「しっかりしてるな!はは!」エイムスはクラウンの背中に手をポンと当てた。
「へへ。エイムスさん達が僕達から権利を買い戻せる事業計画も立てれるよ!4000クレジットなら3年くらいかな?」
ハンター3人は顔を見合って笑った。
「ありがとな。ちゃんと街づくりしてくれるなら権利は持ってていーぞ。」ゼブは腕組みして嬉しさを噛みしめた。
「そろそろ僕達はこれで。スタンリー一家の代理人の追跡に行ってきます。」クラウンは言った。
6人はもう一度抱き合った。
⭐️
クラウンは会場を出ると、ハニと虎徹、ヴァルからのメッセージを見た。
「スタンリー一家の代理人を追跡中。拙者達で話し合ったのだが、出資分を割り勘にしないか?」
クラウンはメッセージを送った。「ヴァルは動植物園に、ハニと虎徹さんはアースの里山計画に出資してるから、ここは僕達だけで大丈夫だよ。スノーもブラストもそれで良いって。ありがとね!」
「OK〜!マップ見て来てね〜合流しよう。」ヴァルがお祝いのクラッカーのスタンプを連打した。
⭐️
スタンリー一家の代理人はプリミティブステーションの飲み屋街を抜けて、大使館の裏路地を通り、その向かいにある、この街一番の高級ホテルに入った。
ヴァルはギルドスーツの上から、ブーツに見えるブーツカバーを被せ、薄手のロングコートを羽織って、ロビーに入って行った。
数分後。
ヴァルからコール。
館内のマップも添付された。
「別館専用エレベーターに乗って3階で止まった。運河の庭の先に個別棟があるからね。ロビーの横のカフェで待機してま〜す。」
虎徹がマップを見て出発した。
ホテルの外壁に沿って素早く走る。
「飛翔。」
高く飛び上がり3階の運河の庭に潜入した。運河の傍の植物の茂みに身を潜める。代理人は小舟に乗り、虎徹の横を通り過ぎた。no4の部屋の前で小舟を降りた。
虎徹のコール。
「四番の部屋に入った。」
「OK!チョコ、おいで。」ハニとチョコはホテルの外壁に沿って走った。
マップを見て、方向を決めるとハニはチョコを抱っこした。「タクシス。」ハニは高く飛びno4の部屋の周りをぐるりと偵察し、バルコニーに降りた。チョコに認識させる為、ハニはチョコを抱っこしたまま中をのぞいた。
ソファーにスキンヘッドの太った男が背を向けて座っている。
そこに代理人が入って来た。
「ピエール様、申し訳ありません!あっという間に5万クレジット越えてしまい、少し追加してみたのですが、どんどん吊り上がってしまい、、」
「役立たずが!」太った男は立ち上がり代理人の男を蹴った。ひっくり返った代理人をさらに殴り始めた。
「ぐわっ!やめてください。次はちゃんとやります。ぎゃ!!」
「収穫祭までにちゃんと用意しとけよ!」
「ぐえ!、、ゴボ、、は、はい。」代理人は首を絞められ、解放されると、下を向いてはいつくばった。
ハニとチョコはリンチの光景に怯えながら、鏡越しに見える位置に立つ為、バルコニーを横切った。
その瞬間、太った男に見られた。
「!外にテロリストだ!」太った男はソファーに身を屈め、AIスピーカーに言った。
「警備員来てくれ!外にマダラデビルがいる!テロリストが来た!」
AIスピーカーから警報が響き、バルコニーのシャッターが閉まった。
「ゴメン!バレた。みんな退却してっ。ほんとゴメン。」ハニはチョコを抱えたままパワーを使って高く飛び上がってホテルから脱出した。ハニは泣きそうな顔で合流場所のステーションの駐車場に向かった。
虎徹もすぐに運河の庭からパワーを使って脱出した。
ヴァルのコール。
「了解〜。ハニ、気にすんな〜。」
ヴァルはロビーでコーヒーを飲みながら成り行きを見守った。
7分後。
代理人が足を引きずり、薄毛の後頭部には大きなたんこぶ、ガサガサの声で「マダラデビルのテロリストがいる。まだ子供だったがバルコニーから逃げた。」とホテルの従業員や警備員達と話しながら現れた。そのままロビーのカフェの奥の階段で下へ降りて行く。
ヴァルはログに収めながら、追跡した。
ホテルの警備員に止められた。
「これより先は一般の通行禁止です。」
「あ、すみません。トイレを探してました。」
「ロビーの横の通路にありますよ。」
「ありがとうございます。」ヴァルはホテルから出た。
ヴァルのコール。
「追跡不可能になった。ボクも合流するね〜。」
スノーのコール。
「今、そっちに車で向かってる。シシッ。みんなをピックアップしてからメシにしよーぜ。」
「いいね〜。ボクのオススメの店があるから、そこ行こう。」ヴァルが話しながら歩いていると、目の前をパトカー数台が高級ホテルに向かって行った。
⭐️
続く。
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