3巻 3章 3話



エイムスは入り口の警備、ナオミ刑事は地元警察と後処理をする事になり、山にはポレポレと小夜を先頭に、みなバスケットを持って山に入った。犬達は山の中を自由に走り回った。


山を登り、沢を下り、30分程でキノコの群生地に到着した。ポレポレの指示に従ってみなキノコを採取した。


「おーい、次に行くよー。」ポレポレが声をかけた。


「まだたくさんあるよ?もう次に行くの?」クラウンは聞いた。


「このキノコは成長が遅いんだ。全部採り尽くしてはいけないよ。」ポレポレが教えると、クラウンはうなずいた。


次のキノコ採取の場所までポレポレの横でクラウンとブラストは話した。


「さっき、エイムスさんが私有地って言ってたけど、ここエイムスさんの土地なんですか?」ブラストがたずねた。


「そう、ここ一帯はエイムスの農園だったんだ。さっきのボロ屋はエイムスの家だよ。久しぶりにここに来たよ。」


「紛争のせい?」クラウンは聞いた。


「そうさ、紛争のせいさ。この辺の農園はハンターとセットで運営してるから、同じ様な境遇の農園主やハンターが集まってプロテア砦で働いてる。来る時はここを通らなかったのかい?」


「うん。ナオミ刑事が紛争エリアを避けて来たから、こんな危ない目に合うなんて知らなかった。」


「おお、そーかい。さっきのマダラデビル族は毒爪で襲ってくるから用心しな。私は毒消し持ってるから困ったら放置せずに言うんだよ。」


「放置するとどーなるんですか?」ブラストは聞いた。


「次の日には死ぬよ。」


「えーー!」クラウンとブラストは声が揃った。


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さらに沢を下り、湿地に着いた。


「あー、うるおうー。シシー、シー。」スノーは深呼吸した。


「人が入らないとこんなにキノコも広がるんだね。いいのがたくさんあるね。さ!もうひと頑張りしよう。」ポレポレは腕まくりした。


みなバスケットがいっぱいになる程、キノコを採り、互いに成果を見せ合った。


「よし、これだけあれば十分だろう。ハーブティー飲むかい?」ポレポレは水筒を取り出し、みなに配った。


「うーん、スッキリして美味しい。なんだか疲れも取れた気がする。ミント入ってますか?」ハニはハーブティーを気にいった。


「ミントも入ってるよ。私のオリジナルの調合だよ。後で家に帰ったら分けてあげよう。」


「ありがとうございます!」ハニはお腹の中が爽やかになった。


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ポレポレはせっかく来たからと、帰りは違うルートを通り、植物や果実を採取しながら帰った。


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入り口に戻るとエイムスとナオミ刑事、警察官達が雑談しているのが見えた。ナオミ刑事がクラウン達に手を振った。


「おかえりー。たくさん取れたじゃない。立派なキノコねー。ポレポレさん、これだけあれば明日には出発できますか?」


「まだだよ。明日はプロテア砦の山で野草取りするよ。それに道具も揃えるから、出発は早くても明後日にしておくれ。」


「わかりました。それで段取りします。じゃ行きましょ。チームが砦まで護衛してくれるわ。」


警察官達がプロテア砦まで先導してくれる事になった。


クラウンは廃屋になったエイムスの家が気になって見た。窓から壁に掛かったアコースティックギターが見え、ボディに3発の弾痕があった。


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無事にプロテア砦に到着し、ハニは約束通りポレポレにハーブティーの茶葉を分けて貰った。


エイムスがトランシーバーで誰かと話している。「わかった。聞いてみる。モナコって知り合いか?」


近くにいたヴァルが答えた。

「そうです。」


「ギャレット、知り合いだって。うん、うん、そうか、聞いてみる。」


「今夜一緒にメシ食いたいらしい。一緒に行くか?」


「もちろん!行きま〜す。みんないいよね?」ヴァルは返事をしてみなを見た。


みなもOKのサインを出した。


「決まりだな。ギャレット、今夜10人でそっちに行くよ。後でな。」エイムスはトランシーバーを切り「ポレポレも、5時にここに集合な。」そう言って、A棟に帰って行った。


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5時。


ギルドのみなは着替えてB棟の前に集まった。夕日を背にエイムスが馬車で迎えに来た。


パカパカパカパカ。

荷馬車のベンチに向かい合ってみな座った。


広大な畑で農工具の片付けをしている人々、木箱を積む人々、木箱で輝くトマト、馬車の音、クラウンは景色にぼーっと見惚れた。


トマトエリアに到着した。


「ササ!プロテア砦にようこそ。」

黒革のベストに黒いシャツ、黒髪のカーリーボブヘアの男が出迎えた。手際よく馬を繋いだ。


「ギャレット、自己紹介は後でゆっくりやろう。おもしれーから。話しながらこれ飲もう。」エイムスはギャレットにロゼワインを1本渡した。


「あーこれ僕の好きなやつ。エイムスありがとう。」ギャレットとエイムスにみなついて歩いた。


ナオミ刑事がハニと小夜に小声で話しかけた。「ねえ、ギャレットさんもイケオジじゃない?」ハニと小夜も「私も思ったー。」とひそひそ話した。


トマトエリアのA棟の裏庭につくと女性達は「わー。」と自然と歓喜の声をあげた。


大きなテーブルにはキャンドルに花、フルーツ、トマト、バーガンディーで統一されたテーブルコーディネートが人数分揃っていた。テーブルの周辺を囲む様に置かれた樽の上にはランタンが並んだ。


キッチンからモナコが大鉢のサラダを持って出て来た。「ササー。今日は私の手料理をたくさん食べて下さい。ワンちゃん達はこちらです。」小さな樽の上にお皿が2つ並べてあり、トマトのファルシーの前で犬達はお座りをしてしっぽを高速で振った。


夕食会が始まった。モナコの料理は色とりどりで、どれも絶品だ。クラウンは牛肉とジャガイモのトマトクリーム煮をほおばった。ギャレットがロゼワインをエイムス、ポレポレ、モナコ、ナオミ刑事、スノー、虎徹、小夜についだ。


ポレポレはトマトのブルスケッタを気に入り、お酒もすすんだ。


エイムスが自己紹介を交えながら、今日のマダラデビルとの一戦をギャレットとモナコに話して聞かせた。


「強いねー。じゃあさー、討伐クエスト出すから君達引き受けてくれないかな〜?」ギャレットはほんのり酔いながら椅子にもたれて言った。


スノーが手を挙げると虎徹もすぐさま手を挙げた。酔ったスノーは「ほらほら、どーしたんだ?」と言いながらテーブルを何度か軽く叩いて煽った。


みなクスクスしながら次々に手を挙げた。ギルド全員が手を挙げるとエイムスとギャレットは目を見合って笑った。


ポレポレはブルスケッタをおかわりしながら言った。「治療が終わってからだよ。」


ギャレットはOKのサインをしながら、キッチンに入って行き、新しい酒瓶を持って戻って来た。「これで祝おう。」みな盛り上がった。


⭐️


続く。

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